書籍

『祖国幻影』 山本巖

山本巖ブックレットシリーズ001
『祖国幻影』
山本巖

A5判、並製、96ページ 
定価:本体600円+税
ISBN4-9980675-2-4 C0095
2刷

望郷-70年目のブラジル移民
帰郷-ある在日朝鮮人の場合
朝鮮凧-ニッポンは祖国にあらず

 第2次大戦後、ブラジルの日系移民の間では「日本は勝った」と信じる人々が少なからずいた。例えば、サントスの港には各地から2千人もの日系移民が集まった。移民の長年の労苦に報いるために、戦勝国・日本の軍艦が、日の丸を翻らせて迎えに来るという噂が流れたのである。望郷の思いに駆られた移民たちが共同の幻影を見たのであった。
 棄民という言葉がある。近代の国家はしばしば民を棄てたが、にもかかわらず棄てられた民は祖国幻想を捨てなかった。ブラジル移民のほか、日本生まれの在日朝鮮人、植民地時代の朝鮮で生まれた日本人と、国家の歴史によって祖国・故郷から引きはがされたゆえに、身をよじるように自分の存在の根拠を追い求めた3つのケースを取り上げる。

 

【著者プロフィール】
1941年北九州市門司区生まれ。早稲田大学卒。
1964年西日本新聞社入社。
社会部、文化部、都市圏部、北京支局などに勤務。熊本総局長、文化部長、編集企画委員長、論説委員長などを務める。
著書に『夢野久作の場所』『昭和史を歩く』『三国志の旅』(共著)など