『なぜいま家族のストーリーが求められるのか』
「公私混同」の時代
橋本嘉代
四六判、並製、240ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN978-4-86385-394-2 C0036
「家族の絆」って言うな!
社会問題の原因も解決策も全て「家族」にお任せ?
結婚・出産の「ご報告」、パタハラ、洗濯男子、テレワーク、親バカ文化・・・・・・。公私領域の再編に注目し、家族ブームの背景を読み解く。
2020年4月上旬全国書店にて発売。
【著者略歴】
橋本嘉代 (はしもと・かよ)
筑紫女学園大学現代社会学部准教授。1969 年、長崎県佐世保市生まれ。
上智大学文学部新聞学科を卒業後、集英社に入社。女性誌編集に携わる。退職後、ウェブマガジンのプロデューサーやフリー編集者などを経て、2014 年から大学教員に。立教大学大学院で修士号(社会学)、お茶の水女子大学大学院で博士号(社会科学)を取得。専門はメディアとジェンダー。
共著に『雑誌メディアの文化史―変貌する戦後パラダイム』(森話社、2012)など。
【目次】
まえがき
1 「私ごと」が国民的関心事に?
「公私混同」の意味が変わった
進次郎&クリステル婚が象徴する「私ごと」の劇場化
ソーシャルメディアの普及と「ご報告」ブーム
家族を語る行為を支えるもの
「家族が大切」という意識の高まり
〈column 01〉メディアとジェンダーとウザい自分語り
2 家族の語られ方が2010年代に変わった
家事とCMと男と女
ぼく作る人&洗う人――料理男子、洗濯男子の登場
パパブログにみる「親バカ」文化の隆盛
誰が「父」として語っているか
「ママだけど……」という役割規範への抵抗
〈column 02〉「うちのオカン」は定番の素材
3 エンタメコンテンツとしての家族のストーリー
家族を問い直すメディア作品への社会的な注目
ハリウッド映画の新旧のヒーロー
「父」を語る欧米文化の輸入
「ご報告」に反映された、父としてのあり方
〈column 03〉その人を、声に出してどう呼ぶか?
4 家族をめぐる政治・経済的な思惑とメディアの関与
家族に関する政策とメディアの連動
国家的リスクと「家族の絆」言説の強化
「イクメン」ブームを支えたもの
レジャーの流行と家族の休日の関係
〈column 04〉ロイヤルファミリーとメディア
5〈公〉〈私〉の揺らぎと家族の変容
浸食し合う〈公〉〈私〉の境界線
家事や育児は押し付け合うものなのか
「家族の絆」言説の過熱化とその弊害
家族のストーリーが求められる理由
あとがき
初出一覧
注釈
web侃づめにて、橋本嘉代さんによる連載「映画&ドラマで家族を考える」を公開中!
書評
熊本日日新聞 (2020年7月5日)評者=田中俊之さん
《高度成長から低成長へと経済状況が変化することで、女性の働き方は主婦からパート、そしてフルタイムへとシフトしていった。それに伴い、男性に対して家事・育児の担い手としての期待が高まるのは当然であり、今後、公と私の境界はますます曖昧になっていくはずである。著者は「『仕事も家庭も』という生き方を実現することが、現代人にとっての課題といえる」と指摘している。〔……〕メディアが提示する新しい家族像は、公と私の垣根を越えた自由な生き方を実現する原動力となるのだろうか。単なるエンタメコメンツとして、家族のストーリーが消費されているかのうせいを考えれば楽観はできない》
ふぇみん(2020年7月15日)
《芸能人の結婚・出産「ご報告」に見られる「公私混同」っぷり、家族を扱うドラマや映画の増加…なぜ今これほど「家族」なのかを追い、そこに潜むリスクや政治的罠に迫る。芸能から社会を斬っていて面白い》
週刊読書人(2021年4月9日)評者=柿沼美咲さん
《本書は、家族のストーリーが求められる多層的な社会構造にあらゆる側面からアプローチすることで、現代の家族の在り方や自分自身に根付いた価値観に影響を与えるものに目を向けるきっかけをくれるだろう》