書籍

『夢野久作の場所』 山本巖

近代史の闇を覗くと現代の狂気がみえる。

『夢野久作の場所』
山本 巖

四六判、上製、304ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-156-6 C0095
『夢野久作の場所』(1986、葦書房)に修正・加筆しています。

人間が抱える不可解さ、不安、
そして不条理。
時代を超えた疑問は解けるのか。
久作の予言なのか…

夢野久作が描いた狂気の世界は、没後50年たっても色あせることなく、多くの人々を魅了し続け、近代史という闇の底に沈む一条の光。人間が抱える不可解さや不安は、簡単には解けない謎であり、本書はその謎を求めて、深く掘り下げていく。狂気に沈む闇は、現代の不可解な闇へとつながっていき、夢野久作の狂気の謎を解くことは、現代の狂気に向き合うことである。

乱歩の「夢野君の書かれた狂気の世界は、狂人自身が書いた狂気の世界で、文学者が書いた狂気の世界ではないといふやうなところがある」(『夢野久作の世界』)は興味深い。探偵小説論的に言えば、久作の作品には、すべてのナゾ解きが終わったあと、なお、人間が抱え込んだ不可解さや不安が残る。久作が批判してやまなかった近代という時代の論理が、さらに広く深く浸透したのが現代であるとすれば、夢野久作をどう位置付けるかは、日本文学史のなかでなお、本質的な課題として残されているといえるのではないか。 (著者)

2014年9月中旬全国書店にて発売。