『花と夜盗』
小津夜景
四六判変形、上製、144ページ
定価:本体1,900円+税
ISBN978-4-86385-552-6 C0092
装丁:成原亜美
英娘鏖
はなさいてみのらぬむすめみなごろし
現世(うつしよ)のカオスにひそむ言葉の華麗な万華鏡(ミクロコスモス)
────谷川俊太郎
『いつかたこぶねになる日』などエッセイでも活躍する俳人・小津夜景。
田中裕明賞を受賞した『フラワーズ・カンフー』に続く6年ぶりの第二句集。
2022年11月発売。
【収録句より】
漣が笑ふいそぎんちやくの朝
蟬生(あ)れて死んで愛してゐた時間
莨火(たばこび)を消して裸足の身を焦がす
香水のちがふ白河夜船かな
パピルスや死後千年の音階図
君の瞳(め)を泳ぐおらんだししがしら
かささぎのこぼす涙をおつまみに
露実るメガロポリスよ胸も髪も
逃げ去りし夜ほど匂ふ水はなく
後朝のキリマンジャロの深さかな
【目次】
一 四季の卵
春はまぼろし
駒鳥の隣人
ルネ・マグリット式
カフェとワイン
ポータブルな休日
狂風忍者伝
冬の落書き
花と夜盗
胸にフォークを
二 昔日の庭
陳商に贈る
貝殻集
今はなき少年のための
AQUA ALLEGORIA
研ぎし日のまま
サンチョ・パンサの枯野道
三 言葉と渚
水をわたる夜
夢擬的月花的(ゆめもどきてきつきはなてき)
白百合の船出
【著者プロフィール】
小津夜景(おづ・やけい)
1973年北海道生まれ。2013年「出アバラヤ記」で第2回攝津幸彦賞準賞、2017年句集『フラワーズ・カンフー』で第8回田中裕明賞を受賞。その他、著作に漢詩翻訳つきの随筆集『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者・須藤岳史との共著『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』などがある。
書評・掲載情報
毎日新聞(11/30)「11月 私のおすすめ」 評者=渡辺祐真(スケザネ)さん
《本句集は知的な戯れに満ちた祝祭のような一冊である。》
週刊読書人(12/16)「二〇二二年の収穫!!」 評者=熊谷充紘さん
《今年もっともうわのそらでいつづけられた本。ことばに溺れ、口ずさむことで、もっともらしい物語や自分から解放される》
雪華 1月号 「言葉たちを船に乗せて 小津夜景句集『花と夜盗』を読む」 評者=鈴木牛後さん
現代詩手帖2月号 連載「到来する言葉」 評者=安里琉太さん
《漢詩から果てはサイバーパンクニンジャ活劇までを参照する知的な斧鑿を楽しむことができ、また詩型横断的な試みを見ることもできる》