書籍

『地中海文学への招待 16の都市をめぐる物語』鵜戸聡・奥彩子・細田和江編著

『地中海文学への招待 16の都市をめぐる物語』
鵜戸聡・奥彩子・細田和江編著

四六判、並製、280ページ
定価:本体2,000円+税

ISBN978-4-86385-735-3 C0095

装幀 成原亜美(成原デザイン事務所)

装画 河合浩

 

地中海文学とはいったい何か? エッセイの形式で綴る入門書!

ヨーロッパ、アフリカ、アジアに囲まれる地中海は、文明の交差点として多彩な文化を育んできた一方、絶えず揺らぎや緊張を内包してきた。11名の気鋭の文学研究者が地中海地域の都市とその街を描いた文学作品を紹介していく日本初の地中海文学入門。

 

執筆者:鵜戸聡(アラブ・ベルベル文学)、奥彩子(ユーゴスラヴィア文学)、小久保真理江(イタリア文学)、小林薫(ギリシャ古典文学)、小林久子(アルバニア文学)、三枝大修(フランス文学)、富田広樹(スペイン文学)、中村菜穂(ペルシア文学)、古川哲(ロシア文学)、細田和江(パレスチナ・イスラエル文学)、宮下遼(トルコ文学)

 

取り上げられる都市:アルジェ(アルジェリア)、アレクサンドリア(エジプト)、イスタンブール(トルコ)、エグ=モルト(フランス)、ガザ(パレスチナ)、グラース(フランス)、ジブラルタル(イギリス海外領土)、ジロカストラ(アルバニア)、セート(フランス)、タンジェ(モロッコ)、テーバイ(ギリシア)、ドゥブロヴニク(クロアチア)、ハイファ(イスラエル)、バルセロナ(スペイン)、プーラ(クロアチア)、ローマ(イタリア)

 

「これまで、文学作品の多くは、国民文学という枠組みの中で個別に論じられることが多く、作品が持つ豊かな背景は、言語あるいは国境によって分断され、限定的な文脈に閉じ込められてきました。近年よく耳にする「世界文学」という語には、こうした制約を免れて自由に文学を味わいたいという願望が込められているように思います。ただ、いきなり「世界」まで射程を広げることは容易ではありません。まずは「地中海」という中間的な地域圏から読み解いてみよう──本書はそんな思いから編まれました」(奥彩子「はじめに」より)

 

2026年10月刊行予定です。

 

【目次】

はじめに(奥彩子)

地中海文学とは何か? (鵜戸聡)

 

Ⅰ 地中海都市に導かれて

アルジェ(アルジェリア) 『異邦人』から『ムルソー、再捜査』へ ダーウド『もうひとつの『異邦人』』(鵜戸聡)

アレクサンドリア(エジプト) 詩的連想のなかのイスカンダルの鏡 『ハーフィズ詩集』(中村菜穂)

イスタンブール(トルコ) 故郷に追いつくときはゆっくり歩いて、オルハン・パムク『僕の違和感』(宮下遼)

エグ=モルト(フランス) 悲しき湿地帯 アレクサンドル・デュマ『南仏旅行印象記』(三枝大修)

ガザ(パレスチナ) 瓦礫に埋もれた物語 リフアト・アルアライール『わたしが死なねばならないとしても』(細田和江)

グラース(フランス) ブーニン『日射病』とシャネルN°5

ジブラルタル(イギリス海外領土) お墓参りに骨折れる カダルソ『モロッコ人の手紙/鬱夜』(富田広樹)

ジロカストラ(アルバニア) 石が語る街 イスマイル・カダレ『石の年代記』(小林久子)

セート(フランス) 素通りされてしまった港町 ジュール・ヴェルヌ『クローヴィス・ダルダントール』(三枝大修)

タンジェ(モロッコ) 失恋と裏切りのバカンス ターイア『ベッドがあれば』(鵜戸聡)

テーバイ(ギリシャ) 物語(ミュートス)の交差する場所(トポス)

ドゥブロヴニク(クロアチア) 時を忘れる街 イェルゴヴィチ『胡桃材の館』(奥彩子)

ハイファ(イスラエル) 記憶と寛容の故郷 ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って』(細田和江)

バルセロナ(スペイン) 陰鬱な都市として ルイス・サフォン『風の影』(富田広樹)

プーラ(クロアチア) 妖精たちのいるところ ヴラディミル・ナゾル『イストラ物語』(奥彩子)

ローマ(イタリア) 移動と混淆の森(小久保真理江)

 

Ⅱ 地中海文学と私

フランス語圏のアラブでベルベルな文学(鵜戸聡)

文学が描きだす、いまはない国(奥彩子)

イタリアとその海の向こう(小久保真理江)

古代ギリシアに生きた人々の営みとしての文学(小林薫)

小さな国の「大きな文学」研究(小林久子)

あてどなく仏文(三枝大修)

遥かなるペルシア(中村菜穂)

たゆたうように本を読む(富田広樹)

ロシアの輪郭=周縁を丁寧になぞる(古川哲)

イスラエルとパレスチナの「間」の文化の研究(細田和江)

古今のトルコを文学作品に探す(宮下遼)

 

地中海文学を知るためのブックガイド

おわりに(細田和江)

執筆者紹介

 

【編者プロフィール】

鵜戸聡(うど・さとし)

1981 年、南九州に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、明治大学教授。専攻、フランス語圏アラブ゠ベルベル文学。主な著書に、『世界の文学、文学の世界』(共編著、松籟社、2020 年)、『クリティカル・ワード 文学理論』(共編著、フィルムアート社、2020 年)、主な訳書に、カメル・ダーウド『もうひとつの『異邦人』』(水声社、2019 年)、アブデッラー・ターイア『ベッドがあれば』(水声社、2025 年)などがある。

 

奥彩子(おく・あやこ)

京都生まれ。共立女子大学文芸学部教授。専門はユーゴスラヴィア文学。著書『境界の作家 ダニロ・キシュ』(松籟社、2010 年)、共編著『東欧の想像力』(松籟社、2016 年)、『世界文学アンソロジー』(三省堂、2019 年)、『世界の文学、文学の世界』(松籟社、2020 年)など。訳書にダニロ・キシュ『ボリス・ダヴィドヴィチのための墓』(松籟社、2025 年)など。

 

細田和江(ほそだ・かずえ)

東京生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー。専門はイスラエル・パレスチナの文学と文化。編著に『mare nostrum 地中海詞華集』(非売品、2024 年)、翻訳にサイイド・カシューア「ヘルツル真夜中に消える」(秋草俊一郎他編『世界文学アンソロジー』、2019 年、三省堂所収)、論文に「イスラエルの文芸誌『ケシェット』と「地中海」・「中東」への眼差し」(岩波書店『思想』2023 年3 月号)など。

 

【執筆者プロフィール】

小久保真理江(こくぼ・まりえ)

東京外国語大学准教授。専門はイタリア近現代文学・文化。共著に『世界の文学、文学の世界』(松籟社、2020 年)、『アヴァンギャルドとジェンダー―イタリア・ドイツ・ロシアの前衛芸術と文学』(東京外国語大学出版会、2025 年)、『地球の文学』(東京外国語大学出版会、2025 年)、共訳に『ウンベルト・エーコの小説講座―若き作家の告白』(筑摩書房、2017 年)、『ウンベルト・エーコの世界文明講義』(河出書房新社、2018 年)などがある。

 

小林薫(こばやし・かおる)

北海道生まれ。慶應義塾大学文学部准教授。専門は西洋古典学。共編著『ホメロス『イリアス』への招待』(ピナケス出版、2018 年)、共訳書ロナルド・サイム『ローマ革命 : 共和政の崩壊とアウグストゥスの新体制 』(岩波書店、2013 年)。


小林久子(こばやし・ひさこ)

栃木県佐野市生まれ。大学非常勤講師を退職後、独立研究者。ロシア文学研究から現在の専門はアルバニア文学。共著『ロシア文学 名作と主人公』(自由国民社、2009 年)、『東欧地域研究の現在』(山川出版社、2012 年)、『世界の文学、文学の世界』(松籟社、2020 年)、『アルバニアを知るための60 章』(明石書店、2026 年)


三枝大修(さいぐさ・ひろのぶ)

千葉県生まれ。成城大学経済学部教授。専門は近代フランス文学。共著に『フランス文学を旅する60 章』(明石書店、2018 年)、『モダニズムを俯瞰する』(中央大学出版部、2018 年)、『ジュール・ヴェルヌとフィクションの冒険者たち』(水声社、2021 年)、『鳥たちのフランス文学』(幻戯書房、2024 年)、訳書にジュール・ヴェルヌ『蒸気で動く家』(共訳、インスクリプト、2017 年)、『シャーンドル・マーチャーシュ』(幻戯書房、2023 年)など。


富田広樹(とみた・ひろき)

北海道生まれ。北九州市立大学文学部教授。専門はスペイン文献学。著書『エフィメラル スペイン新古典悲劇の研究』(論創社、2020 年)、編訳書に『スペイン新古典悲劇選』(論創社、2022 年)。訳書にホセ・デ・カダルソ『モロッコ人の手紙/鬱夜』(現代企画室、2017 年)、ミゲル・デ・ウナムーノ『アベル・サンチェス』(幻戯書房、2019 年)、エレナ・ポニアトウスカ『レオノーラ』(水声社、2020 年)、カルロス・フランス『僕の目で君自身を見ることができたなら』(水声社、2024年)、パトリシア・セルダ『ルゲンダス』(論創社、2026 年)。

 

中村菜穂(なかむら・なほ)

岩手生まれ。大阪大学大学院人文学研究科講師。専門はペルシア文学。著書『イラン立憲革命期の詩人たち』(左右社、2022 年)、共訳『現代イラン詩集』(土曜美術社出版販売、2009 年)、ジャーレ『古鏡の沈黙―立憲革命期のあるムスリム女性の叫び』(未知谷、2012 年)。

 

古川哲(ふるかわ・あきら)

東京外国語大学・工学院大学で非常勤講師。東京外国語大学大学院博士後期課程修了。博士(学術)。訳書にソロモン・ヴォルコフ『ショスタコーヴィチとスターリン』(共訳、慶應義塾大学出版会、2018 年)、プラトーノフ「名前のない花 昔話」(奥彩子ほか編『世界の文学、文学の世界』松籟社、2020 年所収)、アンドレイ・プラトーノフ『プラトーノフ・コレクションI・II』(共編・共訳、作品社、2025-2026 年)など。

 

宮下遼(みやした・りょう)

東京生まれ。大阪大学人文学研究科准教授。専門はトルコ文学史。著書に『多元性の都市イスタンブル:近世オスマン帝都の都市空間と詩人、庶民、異邦人』(大阪大学出版会、2018 年)、『物語イスタンブールの歴史:「世界帝都」の1600 年』(中央公論新社、2021 年)、『オスマン帝国全史:「崇高なる国家」の物語1299-1922』(講談社、2025 年)、共編著にShaping the Field of Translation in Japanese-Turkish Context (Peter Lang、2019 年)、共著に『世界の8 大文学賞:受賞作から読み解く現代小説の今』(立東舎、2016 年)など。