『エリザヴェータ・バーム/気狂い狼 オベリウ・アンソロジー』
ダニイル・ハルムス、アレクサンドル・ヴヴェジェンスキー、ニコライ・ザボロツキーほか
小澤裕之編訳
四六判、並製、496ページ
定価:本体3,000円+税
ISBN978-4-86385-681-3 C0097
装丁 森敬太(合同会社 飛ぶ教室)
装画 大澤フロム
ダニイル・ハルムスの原点、伝説のグループ「オベリウ」の全貌がついに明らかになる──。
100年前、無名の若者たちによって結成された「オベリウ」(ОБЭРИУ)は、20世紀前半のロシアにおける文学的実験の極致をきわめた。ダニイル・ハルムスの「エリザヴェータ・バーム」「出来事」新訳、これまで未邦訳だったニコライ・ザボロツキー「気狂い狼」、コンスタンチン・ヴァーギノフ「スヴィストーノフの仕事と日々」、レオニード・リパフスキー「水論」など、この伝説のグループ周辺12名の代表作を網羅した世界初のアンソロジー。
◎本書作品収録作家……ダニイル・ハルムス/アレクサンドル・ヴヴェジェンスキー/ニコライ・ザボロツキー/コンスタンチン・ヴァーギノフ/イーゴリ・バーフチェレフ/ドイヴベル・レーヴィン/ユーリイ・ウラジーミロフ/アレクサンドル・ラズモフスキー/クリメンチー・ミンツ/ニコライ・オレイニコフ/レオニード・リパフスキー/ヤコフ・ドゥルースキン
「本書に訳出するのは、「オベリウ」と「チナリ」に縁の深い者たちの作品である。どちらのグループにも所属したハルムスとヴヴェジェンスキーは、その反伝統的な作風がロシア国内外で比較的早くから注目され、著作集や全集が刊行されてきた。しかしふたり以外の作品は、ザボロツキーを除き紹介が遅れた。「オベリウ」アンソロジーは、すでに1991年にロシアで、2006年にアメリカで刊行されているが、どちらも「オベリウ」のメンバー(オベリウ派)を網羅しているわけではなく、必ずしも代表作を採っているわけでもない。そこで本書には、レーヴィンやウラジーミロフといった、ロシアでさえほとんど知られていないマイナーなオベリウ派に、「チナリ」のメンバーも加え、それぞれの代表作をなるべく多く収録した。したがって、現時点では本書が世界で最も包括的な「オベリウ」アンソロジーといってよい」(本書「はじめに」より)
「オベリウ派――彼らはそう名乗っている。この言葉は、リアルな芸術の結社のことだと理解されている。この嘘くさい大仰な名前は、レニングラードのちっぽけな詩人グループが勝手に詐称しているものである。連中はほんの僅かだ。片手で指折り数えることができる。その創作ときたら……。」(オベリウに対する批判記事「反動的曲芸」より)
◎オベリウとは?
20世紀前半のロシアにおいて、「ロシア・アヴァンギャルド」
2025年9月上旬刊行予定です。
【目次】
はじめに
「オベリウ」とは何か━━人と成り立ち
「オベリウ」と「チナリ」略年譜
Ⅰ オベリウ
ダニイル・ハルムス
出来事 エリザヴェータ・バーム ヴヴェジェンスキーへ ザボロツキーを訪ねて オレイニコフへ 〈リパフスキーが苦しみだしたのは……〉 どのように使者が私のもとを訪れたか 男が家を出ました ばあさん
アレクサンドル・ヴヴェジェンスキー
〈三七〇人のこどもたち〉 はる こもりうた イワーノフ家のクリスマス
ニコライ・ザボロツキー
気狂い狼 運動 不死 さらば友よ みにくい女の子
コンスタンチン・ヴァーギノフ
スヴィストーノフの仕事と日々(抄)
イーゴリ・バーフチェレフ
取るに足らない隣人のたとえ 「曲がった胃」での出来事 冬の散歩
ドイヴベル・レーヴィン
ドゥームコプフ氏、空を飛ぶ
ユーリイ・ウラジーミロフ
変な人たち スポーツマン
アレクサンドル・ラズモフスキー
追憶のハルムス
クリメンチー・ミンツ
オベリウ派(抄)
オベリウ宣言
Ⅱ チナリ
ニコライ・オレイニコフ
発明家に誉れあれ チャールズ・ダーウィン ハエ ゴキブリ 〈ごく頑丈なガラス越しに……〉 ノミの師範
レオニード・リパフスキー
〈太陽が異国に沈んだ〉 水論
ヤコフ・ドゥルースキン
窓 補遺 〈どのように使者が私のもとを去ったか〉 夢 チナリ
訳者解説━━十二人の「変な人たち」
訳者あとがき
底本一覧
【編訳者プロフィール】
小澤裕之(おざわ・ひろゆき)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学ほか非常勤講師。専門はロシア文学。著書に『理知のむこう――ダニイル・ハルムスの手法と詩学』(未知谷)、訳書にダニイル・ハルムス『言語機械――ハルムス選集』(未知谷)、サムイル・マルシャーク『森は生きている~12の月のおとぎ話~』(小学館)、最近の論文に「ゴーゴリ「査察官」の忘れられた初邦訳:底本・文体・受容」(『ロシア語ロシア文学研究』56号)がある。