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トルーマン・カポーティ (Truman Capote) ①

  • 2011-08-02 (Tue) 10:08
  • 総合

 私のこの旅は「行き当たりばったり」の旅だ。日本を出る前に、再読を含め、10人ぐらいの作家の代表作を読んだ。これに、旅の道すがら、新しく読んだり、再読したりして、10人ぐらい加えれば、「アメリカ文学紀行」となるかなとぐらいに考えている。そうなるか今もって分からない。
 リンカーン(ネブラスカ)にいる時にふと思った。トルーマン・カポーティの力作の舞台が確か中西部の田舎町だったような記憶がある。英語では”In Cold Blood”。翻訳では『冷血』と訳されている小説だ。ネットで調べると、近くのカンザス州だった。それで一旦カンザスシティ(ミズーリー州)に出て、そこからアムトラックの列車でカンザス州の現地に向かうことにした。約9時間の深夜便で早朝に目指すガーデンシティに到着した。
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 カポーティが1965年に『冷血』を著すきっかけとなったのは、1959年にカンザス州ホルカムで起きた一家4人の惨殺事件。ホルカムの人里離れた富裕な農場に住む農園主のクラター一家に深夜「流れ者」の若者二人が押し入る。二人がクラター家に押し入った理由はお金目当ての盗みだった。しかし、目論んでいた金庫がなく、二人は一家の主人を起こし、金庫のありかを聞くが、クラター氏は現金を持たない主義で、金庫はもとより、現金も普段から手元には置かなかった。
 お金がないことに二人は激怒し、病弱のクラター夫人、美しく気立ての良い娘ナンシー、その弟ケニオンを含め4人を殺害する。自分たちの犯行の「生き証人」は始めから皆殺しにすることに決めていたのだ。
 数年前のことだと思うが、カポーティの『冷血』取材(執筆)の舞台裏を描いた映画を観た。原作同様に面白かった。今回、事件(作品)の舞台となった地を訪れるのを機に原作を再読してみた。日本語であれ英語であれ、「遅読」の私には、リンカーンの古本屋で3ドル(約250円)で入手した”In Cold Blood”を読了するのは少し骨が折れたが、400頁に満たない中編で分かりやすい英文だったので助かった。
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 作品自体はカポーティが事件を起こした二人の犯人はもちろんのこと、捜査に当たった刑事、検察官、裁判関係者、被害者の友人、町の人々などに5年余の期間、直接話を聞いて仕上げた。カポーティは作品を「ノンフィクション・ノベル」と呼び、これにより新しいジャンルの小説が誕生したとも言われる。
 さあ、現地ではどんな話が聞けるのだろう。いや、難しいかもしれない。ほぼ50年前のことだから、事件のことを知っている人は少ないだろうし、知っていても、思い出したくない、話したくないというのが普通の感情だろう。ホルカムの町役場にリンカーンから何回か電話を入れたが、やはり、思わしい返答は得られなかった。
 とりあえず、ホルカムに近く、二人の犯人が裁かれ、死刑判決を受けたガーデンシティから当たってみよう。
 (写真は上から、ガーデンシティの街並み。40度の暑さもあり、誰も歩いていない。事件を報じる当時の現地の新聞記事)

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