- 2011-12-19 (Mon) 02:23
- 総合
再びロサンゼルス。再会を約束していた人がいた。日系社会の取材時に出会った小山信吉さん(77)。カリフォルニア州の南部一帯で造園業(ガーデナー)に携わる人々で構成する南加庭園業者連盟の顧問をしている人だ。福島県二本松市出身。
ロサンゼルスは全米1の日系人社会を擁している。このブログの初回に近い「日系アメリカ人」の項で書いたように、カリフォルニア州は19世紀末から日本人が移民してきた歴史があり、初期の日系移民は反日感情の差別と闘って現在の日系社会の礎を築いた。ロサンゼルスを中心とする南カリフォルニアには現在約18万人の日系人が住んでいると言われる。ただし、日系3世以降は日本との縁も薄く、日本語を解さない人も少なくないと見られ、どこまでを日系人と規定するかは難しい問題ではあるが。
日系人が西海岸で暮らす大きな力になったのが、実は日本人が他の移民にない能力を秘めていた造園業だ。日系移民の人々は時に米国人の人種差別的な冷遇にも屈せず、黙々と働き続け、やがて、米国人社会の信頼を勝ち得て、ガーデナーは日系人であれば誰でもいいと言われるほどになっていった。1960年代にはその数8000人にも上り、日系人の3人に1人はガーデナーの時代があったという。
「私は1967年に妻と二人の子供を連れてここにやってきましたから、いわゆる『新一世』と呼ばれる世代です。祖母が日系人を対象にしたボーディングハウスを経営していたこともあり、最初はそのお手伝いをしていましたが、ほどなくガーデナーが天職となってしまいました」と小山さんは振り返る。
造園業者の人々は子供たちに教育を受けさせ、自分たちよりより良い暮らしができるようにさせた。小山さんも渡米後に生まれた長女を含め、3人の子供たちはそれぞれ、公認会計士や弁護士として働いている。当然のことながら、後継者不足の問題が浮上。現在、南加庭園業者連盟のメンバーは1300人ほど。平均年齢は実に75歳だという。
「でも、メンバーは元気な人が多いですよ。私も今も週に4日は仕事しています。南カリフォルニアは雨が少なく、ガーデナーにとっては一年中仕事がある天国のような地なんです。先人が残してくれた『信用』を後の世代に伝えていかないと申し訳ないとも思う。その意味で日本から再び若い人たちがやってくれることを願っています。顧客は無限にありますから」と小山さんは語った。
ロサンゼルスはダウンタウンにリトルトーキョーと呼ばれる一角があることも先に紹介した。しかし、現在、邦人や日系人はダウンタウンから離れた西海岸沿いの高級住宅地に住んでいる。そこでは日本食レストランや日系スーパー、日本人(日系)医師の医療機関も数多くある。邦人、日系人向けの賑々しいタウン誌を見ると、ロサンゼルス近郊では日本と大差ない暮らしがエンジョイできるようだ。いい時代だ。造園業に代表される日系社会の辛苦があってこその今だろう。
(写真は、庭園業者連盟の事務局で保険の仕事に携わる友人と語る小山さん=左)