- 2011-11-11 (Fri) 03:54
- 総合
ルイジアナ州のニューオーリンズ。そのダウンタウンにあるフレンチクオーター。噂には聞いていたが、なるほど、これまで訪れたどの都市とも異なる雰囲気の町だ。ニューオーリンズに行く予定だと言うと、この国の人々は「おお、そうか」と実に羨ましがられた。その理由がここに来た今なんとなく分かる。街角に音楽があふれ、レストランではケイジャン(Cajun)と呼ばれるエスニック料理と酒に酔いしれる。
名前が示す通り、フレンチクオーターはかつてフランスがルイジアナ州一帯を植民地として支配していた17世紀から18世紀にかけ、フランス人が居住していた地区だ。ニューオーリンズの独特の雰囲気はここから発せられているように感じる。
ニューオーリンズではミシシッピ州出身の劇作家、テネシー・ウィリアムズの代表作の舞台を訪ねようと思っている。1947年の “A Streetcar Named Desire” (邦訳『欲望という名の電車』)という作品だ。
物語は南部の裕福な大農場で育った姉妹を軸に展開する。30歳に手が届く姉のブランチと5歳年下のステラ。ブランチは自由奔放な生活ゆえに教えていた高校の英語の教師の職を追われ、今では結婚している妹のステラの元を訪ねる。ステラは夫のポーランド系のスタンリーを深く愛しており、お腹の中には赤ちゃんを宿している。しかし、ブランチはスタンリーや彼の友人たちが気にいらない。自分たちとは育ちが異なるとして、彼らへの軽蔑感を隠せない。スタンリーが聞いているとは知らず、彼女は妹に対し、スタンリーの人間性を酷評する。いやその表現がすさまじい。
“Suppose! You can’t have forgotten that much of our bringing up, Stella, that you just suppose that any part of a gentleman’s in his nature! Not one particle, no! Oh, if he was just—ordinary! Just plain—but good and wholesome, but–no. There’s something downright—bestial—about him! You’re hating me saying this, aren’t you?”
「よく考えてご覧よ。あたしたちがどう育ったか忘れたわけじゃないだろ、ステラ。彼のどこにジェントルマン(紳士)のかけらがあるって言うの?これっぽっちもないでしょ! いいこと、彼がありきたりで、何の取り柄がなくてもいいわよ。善良でまともな性格をしていたとしたら。でも、そうじゃないわ。彼はまるで獣のような男じゃない!あたしがこう言ってるから憎たらしいと思っているでしょ、あんた」
スタンリーは気に食わないことがあると、ステラに暴力を振るうような男でとても好感は持てないが、こうまで酷評されると、いささかの同情は禁じ得ない。鼻持ちならない女とはブランチのような女のことだろう。彼女に恋心を抱くようになるスタンリーの遊び仲間のミッチに対しては、自分はステラの妹だと平然と年齢を偽るような女でもある。彼女の生活が乱れる原因が後半に明らかになり、多少の憐みは感じるとしてもだ。
(写真は上が、有名なストリートカー。19世紀末から走っている歴史ある路面電車で、乗っているだけで面白く感じる。下が、こんな感じのバンドがここではそちこちに)