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ジェイムズ・ボールドウィン (James Baldwin) ①

  • 2011-10-12 (Wed) 05:23
  • 総合

 ハーレムに来て、最初に足を運んだのは、ショーンバーグ黒人文化センター(Schomburg Center for Research in Black Culture) 。マルコムXアベニューに面している。
 通りの名が示すようにハーレムは白人社会に反旗を翻した黒人公民権運動活動家マルコムXが華々しく活躍した地である。センターではマルコムXの展示が催されていた。
 随分昔にマルコムXの伝記を読んだことがある。アレックス・ヘイリーが彼とのインタビューを基にまとめ、マルコムXが凶弾に倒れた1965年に刊行された本だ。展示ではその本からの引用文も多数紹介されていた。
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 図書室をのぞいてみた。たまたま、手にした本をめくっていて、思わず手をとめた。アフリカとアメリカの著名人や主要な出来事の年表が掲載されている。1924年ジェイムズ・ボールドウィン誕生、その側に1925年マルコムX誕生と記されている。この二人は同世代だったのか。さらにその前には1918年ネルソン・マンデラ誕生、1929年マーティン・ルーサー・キング誕生という文字が見える。マンデラ氏(南アフリカ元大統領)はあの二人より先に生まれているのか、キング牧師も二人とほぼ同世代でないか。
 ボールドウィンは1924年に生まれ、1987年に没している。私は彼の代表作と見なされている、1953年に発表された小説 “Go Tell It on the Mountain” を読んだ。(『山にのぼりて告げよ』という邦訳がある)。アメリカという国で黒人に生まれるということがどういうことを意味するのか。そのことを改めて考えさせる名作だ。
 作品は多分に作家の自伝的色合いの濃い物語で、主人公で語り手のジョンは14歳の少年。兄弟は下に弟1人と妹が2人。彼には教会で執事をしている厳格な父親がいて、この父親との確執が物語の柱となっている。というのも、父親は弟を溺愛しており、ジョンとの間には埋めがたい溝がある。一つにはジョンがハーレムや黒人社会の枠にとらわれず、広い社会で羽ばたきたいという抑えがたい欲求があるからだ。彼は休みの日になると、街の映画館に行き、まだ見ぬ世界に胸をときめかせるような少年だった。
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 父親はジョンのそうした気質を見抜き、次のように言って彼に警告する。
 His father said that all white people were wicked, and that God was going to bring them low. He said that white people were never to be trusted, and that they told nothing but lies, and that not one of them had ever loved a nigger. He, John, was a nigger, and he would find out, as soon as he got a little older, how evil white people could be. (彼の父親は白人はすべて邪悪であり、神はやがて白人を貶めるであろうと言った。父親はまた、白人は決して信用してはならず、白人が言うことは嘘ばかりであり、黒人を好ましく思った白人など誰もいない、ジョン、お前は黒人であり、もう少し大きくなれば、白人がどれだけ邪悪になれるかすぐに分かることだろうと言った)
 (写真は上が、ショーンバーグ黒人文化センター。下が、ハーレムを歩いていて見つけた、カフェで行われていたジャズセッション。ビール2杯飲んで心地よいひと時を過ごした)

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