- 2011-10-10 (Mon) 12:44
- 総合
ニューヨークに着いて1か月が経過した。ニューベッドフォードやボストンなどニューイングランド地方を訪ねていた時期もあるので、なんだかあっという間の1か月という印象だ。ニューヨークもそろそろ後にしなくてはならない。その前にきちんと訪れたい場所があった。ハーレム地区だ。
ニューヨークはマンハッタン島に限れば、9・11テロの現場となったグラウンド・ゼロがあるのは南端のダウンタウン、タイムズスクエアやブロードウェイはミッドタウン、セントラルパーク以北はアップタウンと呼ばれる。ハーレムは北のアップタウンにある地区だ。ニューヨークの黒人の人々が数多く移り住んだことから、全米的に文学や音楽などブラックカルチャーの発信地として知られてきた。
ニューヨークで最後に少し書こうと思っている作家、ジェイムズ・ボールドウィンもハーレム生まれだ。あのマルコムXもハーレムで生まれている。せっかくニューヨークにいるのだから、ハーレムで最後の日々を過ごすことにした。ミッドタウンにあるYMCAからハーレムにあるYMCAに移った。経済的理由もある。ミッドタウンのYMCAはニューヨーク中心部では破格の安さとはいえ、一泊115ドルを支払っていた。節約旅行の身にはやはり高すぎる。先週、ハーレムを歩いていてYMCAがあることを知り、尋ねたところ、一泊75ドルで泊まれることが分かった。バストイレは共有であり、部屋にテレビはなく、ネットも一階のロビーでしか使えないという制約はあるが、贅沢は言えない。もっと早くここを知っていればと思わないこともない。
誤解を恐れずに言えば、私のような古い世代にはハーレムと言えば、犯罪、治安の問題が脳裏をかすめる。今回初めてハーレムを歩き、そうした懸念が杞憂であることを知った。第一、ここもデジカメを手にした海外からの(と思われる)観光客が談笑しながら歩き、写真を撮りまくっているのだ。家賃の安さからハーレムに移り住む白人も多いと聞いた。
日曜日。ブランチを食べるレストランを探して歩いていたら、アフリカの民族衣装をまとった黒人の人々が集まっている光景に出くわした。「アフリカン・デイ・パレード」と称して、目抜き通りのマルコムXアベニューを135番通りから125番通りまで歩くのだという。「自分たちのアイデンティティーであるアフリカ出身という出自に誇りを持とう」と毎年この時期に催しており、今年が5回目のイベントだとか。アフリカのすべての国を「網羅」したイベントにはまだ成長していなかったが、参加者の熱気、パレードを見守る人々の笑顔から、その可能性を十分感じることができた。
(写真は、「アフリカン・デイ・パレード」の光景。竹馬のようなものに乗り、闊歩していた若者は「アフリカ合衆国」を意味する “United States of Africa” と書かれたTシャツを着ていた。アメリカ国内から選出された「ミス・シエラレオネ」は20歳。「ミス・ギニア」は19歳。美しい笑顔に魅了された。猫もパレードが見たいらしく歩道に出てきていた。人に慣れているのか、嫌がらずに頭を触らせてくれた。私が触れるのはこの程度だ)
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