- 2011-09-15 (Thu) 10:41
- 総合
語り手のニックに親しみを覚えるシーンがある。次のような記述のところだ。
I took dinner usually at the Yale Club—for some reason it was the gloomiest event of my day—and then I went up-stairs to the library and studied investments and securities for a conscientious hour. There were a few rioters around, but they never came into the library. So it was a good place to work. After that, if the night was mellow, I strolled down Madison Avenue past the old Murray Hill Hotel, and over 33d Street to the Pennsylvania Station.
I began to like New York, the racy, adventurous feel of it at night, and the satisfaction that the constant flicker of men and women and machines gives to the restless eye. I liked to walk up Fifth Avenue and pick put women from the crowd and imagine that in a few minutes I was going to enter into their lives, and no one would ever know or disapprove. Sometimes, in my mind, I followed them to their apartments on the corners of hidden streets, and they turned and smiled back at me before they faded through a door into warm darkness……
(私はいつもは、エールクラブで夕食を取った。ともかくも、これは一日のうちで最も陰鬱なひと時だった。食事を済ませると、上階の図書室に上がり、投資や有価証券について1時間ほど入念に勉強した。下の階では大騒ぎする者たちもいたが、図書室までやって来ることはなかった。学習するには適した場所だった。その後は気分の良い夜であれば、私はマディソンアベニューを古びたマレーヒルホテルを見やりながら歩き、33番通りにあるペンステーションまで散歩した。
私はニューヨークが好きになりつつあった。夜のきわどい心が躍るような感触、男と女や自動車や列車が絶えずせわしなく行き交うのを目にする時の満足感。私は5番街を歩き、群衆の中から好みの女性を選び、彼女たちの生活に入っていく自分の姿を想像したものだ。誰にも知られることなく、とがめられることもない。時には心の中で、人目につかない通りの角にある彼女たちのアパートまでつけて行く自分を思い浮かべたりした。彼女たちは振り向き、私に微笑みを投げながら、ドアを開け、柔らかい暗闇の中に消えていく)
私も連日、NYの五番街を中心に歩き回っている。まだ、肩をむき出しにしたサマーウエアで闊歩する肉付きの良い若い女性は少なくない。時に、ニックのような「妄想」に身をゆだねたくなる時がないこともない。いや、訂正。ほとんどない。
上記の文章に出てくるエールクラブはアイビー・リーグの一つ、エール大学の卒業生が集うクラブで、今も同じ場所にある。先夜、知人に連れていってもらったが、ジーンズにスニーカーといういつもの装いだったため、ドレスコードに触れ、お引き取りを願われれてしまった。黒っぽいジーンズでスニーカーも黒だから、ぎりぎりセーフかと期待していたが、さすがに見破られてしまった。
(写真は、伝統と格式を重んじるNY市のエール・クラブの正面玄関)