- 2011-07-20 (Wed) 07:06
- 総合
『おお開拓者たちよ』は1880年代、ネブラスカの大平原にある小さい町が舞台となっている。バーグソン一家はスウェーデンから米国にやって来た移民だ。町の周辺部は同じスウェーデンやノルウェー、フランス、ボヘミア(現在のチェコ)などヨーロッパからの移民が多く、それぞれ独自のコミュニティーを形成している。バーグソン一家は父親が死の床にあり、父親は農場と一家の行く末を長女のアレクサンドリアに託す。彼女はまだ20歳の若さながら、自分がなすべきことを熟知している。読み進むと彼女が心身の強さだけでなく、美しさも兼ね備えていることが分かる。
彼女には3人の弟がおり、上2人は彼女のような度量もないが、末弟のエミルは容姿端麗に頭の良さも加わった青年に成長し、アレクサンドリアは彼を大学に進学させる。近隣の農家が都市部での安楽な暮らしを夢見て、次々に土地を手放して去っていく中、彼女はやがて大平原が穀倉地帯に変化すると見てとり、実際に、そのように豊かな農場経営者となる。寵愛するエミルの成長に、今や40歳に手が届こうとしている彼女は「お父さんの子供たちの中から、農耕作業に縛られず、農場とは異なる世界で世渡りすることができる者を育てた」と満足し、誇らしく思う。(Out of her father’s children there was one who was fit to cope with the world, who had not been tied to the plow, and who had a personality apart from the soil. And that, she reflected, was what she had worked for. She felt well satisfied with her life.)
しかし、一家の幸せは突然暗転する。エミルは実は人知れず、子供のころから幼馴染で二歳年上のボヘミアの少女、マリアに恋しており、20代半ばになった今も彼女に恋焦がれている。マリアは若気の至りで結婚した夫がいるのだが、もはやかつての愛情は感じていない。二人はお互いに愛を認めた後も自制的日々を送るが、初めて結ばれたその日の夜、嫉妬にかられた夫の銃でエミルとマリアは絶命する。アレクサンドリアはマリアも妹のように可愛がっており、彼女は一度にかけがえのない人を二人も失ってしまう。
アレクサンドリアにもずっと心が通じ合っていた幼馴染の男性で5歳年下のカールがおり、カールは悲嘆の淵にいる彼女に愛の手を差し伸べる。小説の大団円で彼女は彼と結婚して再出発することを決意し、次のように彼に語りかける。「私たちは生まれて、そして死んでゆくわ。でも、土地は常にここに残り続けるのよ。そのことが分かっていて、その土地を愛している人たちだけがそこを所有することを許されるのよ。(生きている)少しの間だけね」(“We come and go, but the land is always here. And the people who love it and understand it are the people who own it—for a little while.”)
新大陸にやって来た移民が形作っていくアメリカ合衆国。彼らの心の拠り所となったのは土地(land)だ。そのことがここに明確に表現されているような気がした。
(写真は上が、リンカーンの街角。下が、ホテルの通りにある温度表示。午後2時過ぎ華氏100度(摂氏37.8度)を記録した。体感温度は40度を超えるだろう。暑い!)
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