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アーネスト・ヘミングウェイ (Ernest Hemingway) ②

  • 2011-11-18 (Fri) 06:42
  • 総合

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 『老人と海』は短い中編小説と呼べる作品だろう。主要登場人物は老いてはいるがまだ頑健な漁師のサンチャゴと老人を慕う少年のマノリンの二人だけ。
 小説の冒頭、老人について、次のような描写がある。
 The old man’s head was very old though and with his eyes closed there was no life in his face. (老人の頭はしかし彼がとても高齢であることを物語っており、目を閉じた顔には生気は感じられなかった)。我々が英作文で上記の文章のように、old という単語を一つの文章で二度使うと、稚拙な文章と見なされるのだろう。事件事故を報じる場合以外は新聞記事でも、同じ単語(表現)が一つの文章あるいは近接した場所に出てくることはまれだろう。ヘミングウェイのこの文章だとそういう印象は抱かせない。
 それで、目を閉じている時の老人に生気が感じられないのは、先にこういう文章があるからだ。Everything about him was old except his eyes and they were the same color as the sea and were cheerful and undefeated. (その男は目以外はすべて年老いているのが見て取れた。だが、彼の目は海の色と同じで、元気にあふれ、不屈の魂が宿っていた)
 物語はキューバが舞台である。博物館のガイド氏は老人のモデルとなった人物がいて、その老人は2002年に104歳で死去したと語っていた。ヘミングウェイは1940年にキーウエストを引き上げて三度目の結婚の後はキューバに移っており、この時にこの老人と親交を深め、彼の漁師としての話に耳を傾け、小説の題材を得たものと思われる。
 次のような表現もある。老人が夢の中でアフリカのにおいを感じたことを述べている部分だ。He smelled the smell of Africa. 私はキーウエストに着いた時に、若干アフリカのにおいを感じた。「あ、何だか似ている」と。私はキューバには行ったことがないが、キーウエスト以上にアフリカ的空気が濃厚なのだろう。だから、この描写にはヘミングウェイの体験も多分に投影されているのではと考えた。
 『老人と海』を再読していて、印象に残ったのは、老人が釣った巨大な魚と体力の限界近くまで「格闘」を続けながら、少年と一緒に以前に釣り上げた大きな魚のことを回想するシーンだった。彼らは一対のカジキマグロのうち、メスを釣り上げた。オスは常にレディーファーストでメスにエサを食させていたからだ。メスは半狂乱になって抵抗した末に、水面に引き上げられ、老人にこん棒で頭部を殴られ、仕留められてしまう。この間、オスはメスの身を案じるかのようにずっと船に寄り添い、メスが船上で息絶えると、最後にそのメスの姿を見納めるかのように空中高くジャンプして、海中に姿を消した。That was the saddest thing I ever saw with them, the old man thought. The boy was sad too and we begged her pardon and butchered her promptly. (あれほど悲しい光景は目にしたことがないと老人は思った。少年も同じ思いだった。二人はメスのカジキマグロに許しを請い、素早く、解体した)
 (写真は、博物館に飾られているヘミングウェイの時代ごとの写真)

Comments:3

正一 2011-11-18 (Fri) 14:41

元気でやっているようで安心しました。日本にはいつ帰ってきますか?
 なつかしいKey West。1973年のクリスマスの時に現地の人に連れられて車でフロリダ半島の南端からKey Westに向かって3分の2くらいまで行きました。当時は観光客は少なく、よくぞこんなに金をかけて橋を作るもんだなぁ、とあきれてみていました。やはり、アメリカは金を持っていたんですねぇ。
 これからも気を付けて、元気で帰ってきてください。

nasu 2011-11-19 (Sat) 01:30

そうですか。1973年にここの近くまで来られたのですね。文章にはできていませんが、40いくつもの橋で結ばれたキーウエストは確かに一見の価値ありです。今は観光客ですごくにぎわっています。日本人を含めた東洋系の人はあまり見かけませんが。

mutsuo 2011-11-21 (Mon) 19:53

正一さんとおっしゃるのは、I 正一さんでいらっしゃいますか?

私はM.Shigeでございます。

那須君のここを借りてご無沙汰のごあいさつをするのは申し訳ないことですが、Iさんのご活躍はこれまで、いろいろなところでお聞きしております。

こんな私ですが、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

 ※那須君、ごめんな、というか、I さんと出会えさせてもろうて、おーきん。 もし人違いじゃったら、I さんごめんなさい。

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