- 2011-11-08 (Tue) 11:59
- 総合
とても居心地の良かったオックスフォードを出て、南のルイジアナ州にあるニューオーリンズに向かう。前にも書いたが、公共交通の便が信じられないほど悪いので、再び北のテネシー州のメンフィスに来ている。ここで一泊して明日の早朝、アムトラックの列車に乗車、約9時間かけてニューオーリンズを目指すことになる。列車の中で夜を過ごすまでには至らないから気は楽だ。チケットも本日、メンフィスに着いて、セントラルステーションで買い求めたら、53ドル(約4400円)ときわめてリーズナブルな値段だった。
メンフィスはオックスフォードを訪ねる際にも一泊したが、あの時は深夜着で市内を見学する時間もなかった。今回は半日ほど時間の余裕があったので、市内を少し歩き、古びた路面電車にも乗ってみた。米北部は寒気が押し寄せているようだが、この日のメンフィスはオックスフォード同様、半袖で歩けるほどのぽかぽか陽気。
メンフィスで半日しか時間がなければ、足を運ぶ先はやはり、マーティン・ルーサー・キング牧師が1968年に暗殺されたモーテルだろう。今は国立公民権博物館となっていると聞いていたので、早速訪ねてみた。記録映画で何度か目にしたことのあるモーテルは拍子抜けするほど貧弱な感じの2階建ての建物だった。キング牧師が銃弾に倒れたベランダには花輪が飾られている。犯人が通り越しに銃撃したビルも博物館として残されていた。13ドル払って入館、死後制作されたビデオを見た。キング牧師の友人の牧師が聴衆に語りかけるシーンが圧巻だった。キング牧師が抱き続けたのは、肌の色に関係なくすべてのアメリカ人が平等に生きる社会を実現させる「夢」だった。凶弾がキング牧師の命を破壊しても、この夢は誰も破壊することはできないと聴衆に力強く語りかける場面では見学者の白人の人々も涙を浮かべながら見入っていた。
メンフィスはエルビス・プレスリーもかつて闊歩したブルースやジャズの町でもある。ダウンタウンのビールストリートでは夕刻ともなると、ネオンサインが輝き、多くのカフェやレストランから賑やかな音楽が流れていた。日本人観光客も多いのだろう。私が日本人と分かると、「こんにちは。いち、にー、さん・・・」などと寄って来て、手にする音楽のCDを売りさばこうとする商売上手の黒人のおじさんたちがいた。
お腹がすいたので、ブルース専門のレストランに入り、メニューを見る。ルイ・アームストロング推奨の一品がうまそうに思えたので早速注文。ソーセージとレッドビーンズがたっぷりのクレオール料理のライスと記してある。約13ドル。ソーセージはいけたが、いかんせん、豆がいただけなかった。私は出された料理を残すことはほとんどしないが、これはさすがに平らげることはできなかった。しかしながら、ウエイトレスのサービスも良く、音楽も良かったので、チップをはずんで引き上げた。
(写真は上から、キング牧師が凶弾に倒れたモーテル。メンフィスの「年代物」の路面電車。ここでも小規模ながら、「ウォール街を占拠せよ」のデモ隊が活動していた。期待外れに終わったクレオールのライス)