- 2011-07-01 (Fri) 11:52
- 総合
木曜朝、サリナスのモーテルのようなホテルで目覚める。ここは一泊72ドル(約6000円)。朝食は無料とのことゆえ、棟続きの食堂に行く。無料だけあって、湯気の立つブレックファーストではなく、セルフサービス。各種ジュースにコーヒー、コーンフレーク。パンケーキは自分で簡易焼き器を使って焼き上げる。結構満足した。
国立スタインベックセンター(National Steinbeck Center Museum)に向かう。ホテルから歩いて15分ほどの距離にある。日本は猛暑らしいが、ここはロスよりもさらに涼しい感じだ。ジーンズに半袖のポロシャツだが、薄手の上着が欲しいぐらい。
センターの前に小学生ぐらいの子供たちのグループがいた。彼らにもスタインベックが「理解」できるのかと思い、尋ねると、母親らしき女性が「いや、隣の映画館に子供たちを連れてきたんです」との由。なるほど、まだ彼らには『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath)は難しいだろう。
センターの入場料は10ドル95セント(約900円)。スタインベックの生い立ちから彼の主要作品にまつわる資料やビデオなどが展示されていた。どれから見ていいものか迷ってしまう。限られた時間で見れるのはしれている。しかも英語だ。メモするのも一苦労。
彼の代表作は1939年に発表された『怒りの葡萄』。アメリカの中南部の農民たちが1929年の世界大恐慌で破産し、銀行に負っている借金で土地を追われ、西海岸のカリフォルニアに活路を見出そうとする悪戦苦闘の物語だが、人間(資本主義)の強欲さ、それでも負けない農民(庶民)のたくましさが描かれている。
『怒りの葡萄』を読んでいると、身につまされるシーンが何度も出てくる。「主人公」のジョード一家はオクラホマ州の農家。カリフォルニア州の人々からは「オーキー」と呼ばれて蔑視される。日本人が「ジャップ」と蔑視されたようなものだろう。長年住んでいた農場から追い立てられ、日々の暮らしに必要な家財道具をぼろ車に積載し、仕事と食べ物を求めて西に向かう。生きる術はほかにないのだ。カリフォルニア州の人々には彼らは治安を乱し、仕事を奪う厄介者として映った。だから作中、カリフォルニア州の同胞の間では次のような会話が交わされる。こんな会話がかつて現実に交わされたとは信じ難いが。
“Well, you and me got sense. Them goddamn Okies got no sense and no feeling. They ain’t human. A human being wouldn’t live like they do. A human being couldn’t stand it to be so dirty and miserable. They ain’t a hell of a lot better than gorillas.” 「そうだな。俺とお前は常識を持ち合わせている。あいつら汚らわしいオーキーは常識も感情も持ち合わせていないんだ。連中は人間じゃない。人間なら、連中のような暮らしはしない。人間なら、あんなに汚くてみじめな生活を我慢できようはずもない。連中はゴリラとたいして変わらないよ」
(写真は上から、国立スタインベックセンター。『怒りの葡萄』にまつわる展示物。作家の生家は地元のボランティアが営む「非営利」のレストラン「スタインベック・ハウス」になっていた。昼抜きの私が無理して食べた約1300円の野菜たっぷりのランチ)
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Comments:1
- mutsuo 2011-07-01 (Fri) 18:26
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那須君
ここには俺も行ったよ。
2001年の9・11テロの直前じゃったが、ホームステイ引率のときのミニトリップで行った。
えろう懐かしい写真をおーきんね。