Home > 総合 > セオドア・ドライサー(Theodore Dreiser)①

セオドア・ドライサー(Theodore Dreiser)①

  • 2011-08-24 (Wed) 02:11
  • 総合

 シカゴにいるので、シカゴとゆかりの深い作家の作品を考えることにした。というか、それもあって、シカゴに立ち寄ったわけでもあるが。
 ”An American Tragedy”。セオドア・ドライサーが1925年に発表した作品で、「アメリカの悲劇」と邦訳されている。ドライサーは1871年にインディアナ州の貧しい家に生まれ、セントルイスやここシカゴなどを転々として、新聞記者を始め多くの職業を渡り歩く。資本主義のひずみを告発する自然主義の作家として台頭する。1945年死去。手元にある英文のアメリカ文学ガイドブックは、”An American Tragedy”は20世紀初頭の「アメリカン・ドリーム」が内包した危険性を描いた秀作と紹介している。
 The novel is a scathing portrait of the American success myth gone sour, but it is also a universal story about the stresses of urbanization, modernization, and alienation. (この小説は歯車が狂ったアメリカの成功神話を痛烈に描いた物語である。と同時に、都市化、現代化、疎外感がもたらすさまざまなひずみを描写した普遍的な物語でもある)
null
 題名だけは知っていた。そういう名の小説があることを。恥を明かせば、いつか原書で読んだことがあるとも思っていた。今回の旅を前に図書館から借り出して読み始めたところ、いやそれは間違いだったことが分かった。第一、これは予期していた以上に長尺な小説だった。手にしたのは「戦闘意欲」をそぐような700頁を超える分厚い本。こんな本を原書で読んだとは思えない。
 この作品は端的に言えば、裕福な生活を夢見る貧しい青年が二股かけた恋に陥り、結果的に浅はかな行為に出て、転落していく物語だ。クライド・グリフィスという名の青年は職場で知り合った、貧しいが愛らしい少女、ロバータと恋に落ちる。それもつかの間、今度は自分たちとは比較にならない富裕な家の出でこれまた美しい少女ソンドラを見初める。ソンドラと相思相愛になった青年は、迷うことなく彼女を選び、最初に心も体も許してくれたつましく生きるロバータを捨てることを決意する。この種のお話自体は古今東西の永遠のテーマだろう。
 正直に述べると、読破するのに難儀した。これだけの長尺のストーリー展開が必要なのかと思わないこともなかった。米文学の傑作に対して甚だ失礼な感想ではあるが。ただ、難儀したのはそれだけの理由からではない。小説の主人公(protagonist)である青年、クライドの生き方というか、性格というか、彼の考え方にあまり好感が持てず、読み進めながら、「おい、お前さんよ。もっと、自主性をもって生きられないのかい?親戚の人などに頼らず、生きたらどうなんだい。自分の出自にそんなにこだわり続けてどうすんだい?」と喝をいれたくなること、しばしばだったからだ。まあ、小説の世界とはいえ、私は人様にそんな説教を垂れるほど立派な人生を歩んでいるわけではないので、大きなお世話だが。
null
 (写真は、シカゴの全米1の高さ(442メートル)のウィリス・タワーからの眺め。ガラス張りの屋上部に寝そべり記念撮影、スリルを楽しむ観光客)

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。

Home > 総合 > セオドア・ドライサー(Theodore Dreiser)①

Search
Feeds

Page Top