- 2020-08-10 (Mon) 09:46
- 総合
CNNのネットに日本の健康飲料「ポカリスエット」の話題が出ていた。The ‘Sweat’ you drink: Inside the meteoric rise of Asia’s answer to Gatorade という見出しだった。アメリカのスポーツドリンクの王様、ゲータレードに相当するアジアのドリンクと持ち上げてはいるが、さすがに商品名に「汗」があるのが気になるようだ。
冒頭に近いパラに次のような文章があった。That drink was called Pocari Sweat. And despite its name — unappetizing to native English speakers — it's a well-known Japanese sports drink across Asia and the Middle East. 英語のネイティブスピーカーには食指が動きそうにない名前にもかかわらず、ポカリスエットがアジアや中東地域でよく知られた日本のスポーツ飲料であると記している。名称はunappetizing だと。
ポカリスエットを製造しているのは大塚製薬。私はどこが作っているのか知らなかったし、興味もなかったので、記事を読んで初めて知った。「ファイトイッパーツ!」のCMの「リポビタンD」なら何となく大塚製薬かなと思わないでもない。記事を読み進めて、ポカリスエットがなぜ sweat(汗)を含んだ商品名であるのかが分かった。それまでの清涼飲料水と決定的に異なるのは、運動で失われた水分をすぐに体内に取り入れやすいように研究開発されたのだという。ヒントになったのは点滴だとか。運動で身体から流れ出る汗とほぼ同じ成分で作られているのでsweatが名前にも活かされた。1980年に発売開始。
それではなぜ「ポカリ」? 普通は「ポカリ」と聞けば「ぽかりと一発叩く」のぽかりを連想するが、全然意味はないとか。要するにヨーロッパ風の響きがあってかつ発音しやすい名前を求めたようだ。意味は「スエット」で十分だったというわけか。
ここで思い浮かべたのは夏の定番の乳酸菌飲料、カルピス(Calpis)のこと。この語は海外の英語話者には「牛のおしっこ」(cow piss)と聞こえ、失笑を買うことがある。CNNの記事を読んでいて、あと一つ思い出したことがある。我々がいい英語表現だと思って使って(耳にして)いるものがネイティブスピーカーには時として不自然であったり、奇妙な物言いとなっていることを。
私が思い出したのはかつてある(化粧品?)会社がテレビで流していたCMの “For beautiful human life” という締めの決まり文句。英字新聞時代の同僚(英語ネイティブ)が私にこれは「凄くおかしい英語表現だ」と苦笑しながら語ったことがある。私はその時、彼がなぜ上記の表現を「おかしい」と感じたのか戸惑った。よく考えると、なるほどhuman の一語が余計なのだ。火星人でも地球に訪れたとし、我々人類の代表がどこか山奥の温泉地を案内して、「ご覧ください。これが温泉というものです。これで私たちは日々の疲れを癒しているのです」と火星人に語ったとしたなら、“For beautiful human life” はいい表現となるかもしれない。しかしそうでなければ、分かり切っていることだ。それをことさら、human と言っているのが不自然であり、奇妙ということになる。
記事を読んで、ポカリスエットが試行錯誤の末に生み出されたドリンクであることが分かった。私もかつては二日酔いの翌朝、よくこれを買い求め、喉を潤していた。週末だけチョイ飲みの今はそうしたお世話になることはほぼ皆無となっている。
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