- 2020-03-25 (Wed) 09:13
- 総合
月曜朝のこと。寝起きにスマホで新型コロナウイルスの最新のニュースを確認しようとしていて、BBCのトップ記事に目が引きつけられた。ドイツ政府がドイツ国内でも深刻化の一途にあるコロナウイルスを抑え込む対策として、“groups of more than two” の集まりを禁止すると表明した。私はこの “more than two” という表現に戸惑った。おそらく即座に脳内で「2人以上の集まり」と翻訳理解していたのだろう。「2人以上」がだめなら、要するに一人で行動せよということか? まさか?
実は私は新聞記者を稼業としていた昔から、日本語の「以上」「以下」「未満」「~年ぶり」などといった表現に居心地の悪さを覚えていた。迷うと会社の「スタイルブック」をくくり、正しい用法を確認した。今、そのスタイルブックを改めて読むと、例えば100個以上(以下)は100個を含む、100個未満は100個を含まないと記してある。英語の “more than” は日本語の「以上」に似てはいるが、ぴったり重なるものではない。“more than two” とあれば、2は含まれない。だから、上記の記事の見出しを日本語に訳す場合、「2人以上の集まりを禁止」ではなくて「3人以上の集まりを禁止」としなければならない。こういう基本的な事柄もうっかりすると勘違いしてしまう。私はこうした表現が苦手だ。
誤解を招きたくなければ、例えば、“Germany bans groups of three or more to curb virus” とすれば、夫婦やカップルなどの2人連れは禁止措置から除外されることが明確になる。
◇
英米のメディアではコロナウイルス対策として、“social distancing” という表現を目にしない日はない。「人混みを避けるなど、人との接触機会を減らすこと」を意味するが、今回のウイルスだけでなく、現代社会では感染症から身を守るキーワードの一つとなるのだろう。誰か定訳を作った方がいいかと思う。「ソーシャル・ディスタンシング」では長過ぎるし、子供や中高年には伝わりにくい。「人間(じんかん)距離を保て」「人混みに近づくな」などといった表現が頭に浮かぶが、もっといい表現があるはずだ。「プライバシー」を念頭に「スペイバシー」は無理があるか?
◇
コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている折、あまり悠長なことは書きたくはないのだが、少なくとも私の周辺では緊迫していないのだから致し方ない。最近再び時々手にし始めた『漢詩鑑賞事典』のことを書きたい。陶潜(淵明)(365-427)。東晋の人で晩年は田園に遊び、酒を愛し、隠者的な暮らしを楽しんだ御仁のようだ。彼の詩を読むとぜひ昵懇になりたかったお人だと思ってしまう。「飲酒」と題された詩もある。「雑詩」と題された五言古詩は以下の最後の二句が特に有名か。及时當勉勵 歳月不待人(時に及んでまさに勉励すべし 歳月は人を待たず)
『漢詩鑑賞事典』では「よい時を得たら逃すことなく精いっぱい楽しむのだ 年月はどんどん流れていって、人を待ってはくれないのだから」という訳が載っている。このくだりは「若いときに勉強しなさい」と誤解されがちだが、「チャンスを逃さず遊べ」と勧めているのだとか。日本ではまだ古墳時代の頃に海の向こうで暮らした詩人の言葉・・・。
- Newer: アズスナアズポサブル
- Older: 今夏の開催、風前の灯