- 2019-10-04 (Fri) 10:28
- 総合
地球外生命体はいるのか? 香椎浜をジョギングしている折など、空を飛ぶ飛行機を見ていて、いつかこの空にUFOの大群が押し寄せたりしたら、人類は大騒ぎになるだろうなあ。しかも敵対的な来訪だったりしたら、などと夢想する自分がいる。宇宙の果てから大挙して地球を訪れる地球外生命体は間違いなく人類よりはるかに進んだ科学技術を有していると思われる。地上にへばりついて暮らす我々を滅亡させるのは、彼らにとってたやすいことだろう。21世紀中に実際にそういう事態になったとしても、自分はその場に居合わせることができない。それは果たして運よくと言えるのだろうか、などとも考える。
読売新聞社に勤務していた時の同僚が『言語学者が語る漢字文明論』とともに、言及していた本が、まさにそうしたことをテーマにして書かれたSF小説だった。私など足元にも及ばない読書家の元同僚はさすがに「守備範囲」が広い。
中国人作家、劉慈欣の『三体』(早川書房)。劉氏は1963年、山西省生まれのSF作家。私は初めて知ったが、今や中国のみならず世界的に注目を浴びている作家だとか。帯カバーの紹介が凄い。「現代中国最大の衝撃作、ついに日本上陸」「中国で三部作累計2100万部突破 アジア圏&翻訳小説初のヒューゴ賞受賞」などと紹介されている。日本語訳には3人の翻訳者の名前があり、後書きを読むと、ヒューゴ賞受賞となった英訳本も参考に邦訳がなされたことが分かる。
400頁を超える大作だったが、飽きることなく読破できた。いや飽きることなくというのは正確ではないかも。結末近くは私には到底理解できない陽子だの微小宇宙、マクロ原子だの、難解な天体・物理・科学用語のオンパレードで、私の拙い脳細胞が機能しないまま文章を目で追うことになった。これまでこのような小説の類は(おそらく)読んだことがない。帯カバーにある識者の「驚天動地の人類史網羅SF」「奇跡の"超トンデモSF"」という評価を見ると、SF小説のジャンルでも群を抜く作品であるらしい。道理で。
『三体』で描かれているのはほぼ現代の地球文明。米中の対立関係も続いているようだ。現代文明の環境汚染、生態系破壊に、つまり人類のありように絶望した知的階層の人々が銀河系外の生命体とコンタクトを取り、人類の救済もしくは征服を求める。このこと自体奇想天外な設定だが、気がついた時は中国が主要舞台の物語の展開に引き込まれている。
地球から送出された電波メッセージに応じて「三体」と呼ばれる惑星の異星人が地球に向け、艦隊を派遣することを決める。この異星人は人類よりはるかに進んだ文明・科学を手にしているようで、統括するのは「元首閣下」と呼ばれる人物。人物と書いたが、どうも限りなく人間に類似した生命体のような印象を受ける。彼らが住む「三体」はしかし、酷暑・極寒の居住し易い惑星ではないようだ。彼らの艦隊が地球に到達するのは物語が語られる時点から450年後。その間に地球人類は自分たちの科学を異星人と対峙できるほどに進歩させることができるのか。
中国語ではすでに三部作が完結しており、これから日本では二部、三部と刊行されていく運びのようだ。SF小説の世界でもこれからは中国人作家の作品に刮目すべしということか。嗚呼、中国語の原書で読めたらなあ!450年後、45年後、いや4.5年後にでも。
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