- 2019-04-05 (Fri) 10:54
- 総合
ホテルを移った。台北は地下鉄が便利で、タクシーに頼らずとも目的地に行けるのが有難い。スーツケースが重い。ロンドン支局時代から使っているが、今回、福岡空港で取っ手の一つが遂に破損した。車輪も音が凄まじい。押して歩くと、周囲の誰もが驚いて振り向く。そろそろ買い替えの時期かも。何だか「旧友」と別れるような気がする。
移ったホテルの部屋は12階。通告されていた通り、とても狭く、スーツケースの置き場に困るほど。窓もない。だから部屋の中にいると下界の様子が全然分からない。それでもここを選んだのは宿賃が格安だったから。個室が確保されてきちんとした浴室や多チャンネルのテレビがある部屋を求めれば、これが望みうるベストの選択ではと思う。フロントのスタッフの対応も安心できるものだった。
金曜日朝。前夜は残念ながらなぜかあまり熟睡できなかった。空腹を覚えたのでとりあえず、朝飯を食べようとフロントに向かった。このホテルでは出かける時は必ず鍵をフロントに預けるように言われている。朝飯のため出かけると(英語で)言うと、スタッフの女性が「今日は休日だから街中の食堂は開いてないでしょう。コンビニに行けばいいですよ」と言う。ああ、そうなの。ふと、フロント奥のカレンダーに目をやると、4日と5日が真っ赤に染まっている。あれ、昨日も休日だったの?と尋ねると、そうですとの返答。なるほど、だから昨日は家族連れが街中にあふれていたのかと合点が行った。
本日5日は清明節だとか。そう言えば、昨日近くのレストランの外壁に「清明節 休息一天」という張り紙を見かけた。「清明節には一日休みますよ」というお知らせだろうかと推察はできたが、それが今日だったのか。確かにホテルの外に出ると通りはどこも閑散としていた。少し小雨もぱらついている。コンビニの手前でパン屋さんが営業していたので飛び込む。クロワッサンのようなパンを2つと牛乳を買う。締めて115元(約440円)。女店員さんが「パスポートをお持ちでしたら割引できますよ」と(英語で)言う。もちろんパスポートを持って朝飯食いには出かけないので持っていない。これからは持って出ようかな。
新しいホテルは来週から通う大学に近いので選んだのだが、前日暇つぶしに辺りを散策してみると、すぐそこに台北を代表する観光スポットの一つ、「中正紀念堂」があることに気づいた。中華民国の初代総統である蒋介石が祀られ、市民が憩う公園ともなっている。中正とは彼の本名(蒋中正)に由来するという。
これまでの旅でもそばを通ったことはあるが、足を踏み入れたことはなかった。大孝門から中に入る。実に広々とした空間が広がっている。家族連れ、若者、外国人旅行客で賑わっていた。蒋介石の座像がある本堂へ石段を上る。座像の両脇に衛兵が立っている。微動だにしないのでマネキンかなと思って近づいてみる。マネキンにしては実に精巧にできている。まるで生きた人間のようだ。感心しながら見やっていると、かすかに前後に揺れたような気がした。あれっ、ひょっとして人間? 近くで日本語が聞こえてきた。「皆さん、よくご覧ください。瞬き一つしないでしょ」というガイドらしき人が説明している。やはり人間だ。ホテルに戻ってネットで検索してみると、鍛え抜かれた軍の兵士の精鋭が一時間交代で衛兵を務めているのだとか。なるほど、瞬きさえ許されていないのか。