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ワシントン・ポスト紙売却

  • 2013-08-07 (Wed) 15:07
  • 総合

 アメリカから二つの興味深いニュースが飛び込んできた。一つは米国を代表する有力紙の一つ、ワシントン・ポスト紙が身売りしたというニュースだ。買い手となったのは米インターネット通販大手のアマゾン・ドット・コムの創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏(49)。売却金額は2億5千万ドル(約245億円)だという。読売新聞の報道によると、ベゾス氏の推定資産は280億ドル(約2兆7千4百億円)。買収額はその1%弱だと書いてあった。想像もつかない金額だが。
 ポスト紙の売却は長年の部数減に歯止めがかからず、今後も営業収益の改善が見込めこないことから、決定に至ったものだという。読売新聞によると、販売収入が6割近い日本の新聞産業と異なり、アメリカの新聞各紙は広告収入に大きく依存しており、各企業の広告費削減やインターネットメディアとの競争で厳しい状況にあるという。ポスト紙をファミリービジネスとして代々経営してきたドナルド・グラハムCEOは「我々の経営下でもこれからも十分サバイブすることはできたであろうが、我々はサバイバル以上のものを求めている。(ベゾス氏への売却が)成功を保証するものではないが、(ポスト紙の)成功へのチャンスをより広げることになる」と売却理由を語った。
 インターネットメディアの台頭で伝統的な活字メディアが苦戦しているのは周知の事実とは言え、名門ポスト紙の身売りは衝撃度が異なるように思える。アメリカの活字メディアが大きく変容していく「分水嶺」となるような予感もする。日本の新聞産業にはどう波及することになるのだろうか。
 もう一つのニュースは禁止薬物スキャンダルで揺れる米大リーグにまつわるものだ。大リーグ機構(MLB)はニューヨーク・ヤンキースの強打者アレックス・ロドリゲス選手(38)を含む13選手に対する、禁止薬物規定違反での出場停止処分を発表した。最も重い処分はA-Rod(エイロッド)とも呼ばれるロドリゲス選手で、今月8日以降の今季残り試合と来季全試合の計211試合のプレーが禁じられた。
 エイロッド選手は “the highest-paid player in baseball” と称されるプレーヤー。2007年のシーズン終了後、ヤンキースと10年総額2億7千5百万ドルの契約で残留している。今回の報道で再びこの数字に出合い、エイロッド選手の「価値」が米政界ひいては世界政治に大きな影響を及ぼす有力紙の売却額とほぼ同額だったことに少し考え込んでしまった。
 エイロッド選手は昨年のシーズンオフに股関節を手術して故障者リスト(DL)入りしており、その復帰がMLBの処分発表と重なった。彼は処分に対しては異議を申し立てる方針であり、調停機関の裁定が出るまでは試合に出場できるとか。シカゴでの試合に出場したエイロッド選手にはバッターボックスに入る度に観衆から情け容赦のないブーイングの嵐が起きた。観客席では少女が “A Rod Cheater” (エイロッドは詐欺師)と手書きした紙を掲げているのも目に入った。
 エイロッド選手はこれからもあの大ブーイングの嵐に抗して、バッターボックスに立ち続けることができるのか。普通の神経では耐えられないだろうと思う。

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