- 2018-11-21 (Wed) 21:35
- 総合
先週末、文学の集いで久しぶりに夜の天神に足を運んだ。出版社・書肆侃侃房が主催し、作家の角田光代さんと韓国の作家チョン・ユジョン(丁柚井)さんの対談があったからだ。私は角田さんの作品は『八日目の蝉』しか読んだことがないが、チョン・ユジョンさんは昨年の今頃、彼女の長編小説『七年の夜』を読んだばかり。(『七年の夜』については昨年11月27日付けのブログを参照あれ)
日韓の第一線で活躍する二人の女流作家(こういう表現はまだ許されるのだろうか?)がどんなことを語るのか興味をそそられた。質疑応答を含め2時間に及んだ対談は大変面白かった。チョン・ユジョンさんは韓国文壇を代表する作家だが、角田さんともども、飾らない気さくな人柄で、その親しみやすさは語り口ににじみ出ていた。彼女が作品で一貫して追求しているのは、人間が普遍的に有している野獣性。極限の状態でそれがいかに現出するのか。綿密な取材を経て構想を肉付けしていく作家の作法が集まった人々を魅了した。
対談終了後、近くの居酒屋に場所を移して懇親会とあいなった。残念ながら角田さんは参加できなかったが、チョン・ユジョンさんは通訳の方々と一緒に同席。私は彼女とはす向かいに坐したこともあり、親しく話をする幸運に恵まれた。もちろん、日本語が達者な韓国人の通訳の方が2人もおられたことで会話が弾んだ次第だが。
それでも行きがかり上、何度か私も拙い韓国語でチョン・ユジョンさんたちに語りかけることを余儀なくされた。悔しいことに久しぶりに生の韓国語を話そうとしたら、なかなか言葉が出てこない。これも最近では中国語の方に精力をつぎ込んでいる付けが回って来た形だ。それでも必死になって言葉をつなぎ合わせようと努力した。韓国語と日本語は語順が同じだから頭に浮かんだ語彙をそのまま口にすればいいのだが、問題はその語彙を知らない、あるいは学んだ記憶はあるが、忘れてしまっている。
そうしたら、チョン・ユジョンさんや連れのお友達が「韓国語の発音がいいですよ。自信をもっていいですよ」みたいなことをおっしゃる。チョン・ユジョンさんは「まるでアメリカから帰国した韓国人のような韓国語ですよ。韓国でそう言えば、信じてもらえますよ」とも言われた。私はここで思い出した。こういうときには「お世辞言わないでくださいな」という韓国語特有の言い回しがあることを。それで頭に浮かんだ「ピヘンギタジマセヨ」と言った。彼女たちは爆笑した。「あら、よくそんな表現ご存知ですね」みたいな感じだった。私がビールではなく、ウーロン茶で通していたことをチョン・ユジョンさんになぜ?と尋ねられ、「私はもう一生分を飲んでしまいました。還暦を過ぎたので新しい人生を歩みたいのです」と答えたが、これは分かって頂けたか自信がない。
深夜帰宅した後、「お世辞言わないでくださいな」はちょっと表現が違ったかなと思い、韓国語辞書でチェックした。そうしたら、やはり少し違っていた。正しくは비행기를태우지마세요. だった。 비행기(ピヘンギ=飛行機)に태우지(テウジ=乗せないで)마세요(マセヨ=ください)と言うべきだった。「タジ」ではなく「テウジ」だった。最初と最後が一応合っているので私のヘンテコ韓国語も分かって頂けたのだろう。
これからはまた韓国語にも少し本腰を入れよう!
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