- 2016-09-19 (Mon) 09:10
- 総合
このところ米大統領選はあまり熱心にフォローしていなかった。どうせ11月の本選が近づけばまた注目することになるみたいな。破天荒の暴言を繰り返す共和党の候補者、ドナルド・トランプ氏を巡る報道に辟易していたことも一因していたかと思う。これまで彼の一言一句を無批判に「垂れ流し」してきた米大手メディアも「反省」し、チェックを強めているという報道にも接したばかりだ。遅過ぎる気がしないでもないが。
そういう事情で米東海岸に住む恩師から定期的に届く大統領選に関するメールも見出しをざっと一読する程度で済ませていた。しかし日曜に届いたメール(ニュース)はセンセーショナルな見出しゆえにじっくり目を通した。“Trump’s Behavior Similar To Male Chimpanzee, Says Jane Goodall” という見出しだけで記事の内容が容易に想像できる。果たしてその内容はトランプ氏の一連の言動が雄のチンパンジーのそれに似ているという文化人類学者の指摘を反映したものだった。
インターネット新聞のハフィントンポスト紙上でこのユニークな見立てを提供したのは、著名な英国出身の文化人類学者であるジェーン・グドール氏。グドール氏によると、チンパンジーの雄は群れのボスの座を射止める時に他の雄を威嚇するため、地面を足で踏み締めるとか、木の枝を引きずって見せる、岩を投げるといった行動に出るのだとか。そうした行動が派手であればあるほど効果があるのだという。グドール氏はトランプ氏の言動がチンパンジーのそれに似ており、この大富豪を見ていると彼女が以前観察したことがあるマイクという名のチンパンジーを思い起こすという。マイクは灯油缶を蹴飛ばして大混乱をひき起こし、競争相手を退散させる手を得意としていたようだ。なるほど。
記事によると、トランプ氏の手法はメディアのそして国民の注目を集めることを狙っているのであり、自分の言っていることが真実であるか否かは問題ではない。これほど大胆なことを言えるのはこの俺しかいないぐらいだろう。どうだ、参ったか! てな具合だという。例えば、メキシコ国境に不法移民の流入を防ぐどでかい壁を構築し、工事費はメキシコに負担させるといった発言や、オバマ大統領は米国生まれではなく米国の大統領になる資格はない、といった暴言もそう考えれば理解できなくもない。
ハフィントンポスト紙の記事はトランプ氏の自伝を手伝うなど彼を熟知するジャーナリストの言葉で終わっている。彼の評価によると、トランプ氏は物事に集中するのが苦手で、複雑な情報を咀嚼することができない。だから議論の途中で怒鳴り散らすか、子供じみた論を展開し、言いだしたことを満足に言い終えることもできず、同じことを何度も繰り返す。つまり内容のあることを論じることは望めないという。
トランプ氏のスピーチを聞いていて、彼が確かに同じことを何度も繰り返すのに気づいていた。これまでは彼の癖だろうぐらいに思っていたが・・・。
米大統領選は今月26日に民主党の大統領候補、ヒラリー・クリントン氏との初めてのテレビ討論会が行われる運びだ。10月にも2回の討論会が予定されている。果たしてトランプ氏が世界が注視するこの討論会でどのような論を繰り広げるのか、あるいは繰り広げないのか。秋の夜長の退屈さを少しは紛らわせてくれることを期待して待とう。