- 2016-09-01 (Thu) 15:56
- 総合
やはり午後の便もキャンセルとなった。ほぼ一日を港のフェリー待合室で過ごし、結局、南浦洞のホテルに引き返す羽目に。海の上の自然現象はどうしようもない。これも神様の差配(providence)と思って受け入れるしかない。
ホテルに引き返し、なじみになったフロントの人にもう一泊これまでと同じ料金でと頼み込む。他にやることもないのでいつか行ったサウナ付き銭湯に行く。夕食は何を食べようか。そういえば、今回の旅では魚を食べていないことに思い至った。釜山に来て海の幸を食べないのは片手落ちだろう。過去に何度か足を運んだことのあるジャガルチ市場に出かけた。ビルの一フロアに居酒屋風の店がひしめき、ヒラメの刺身と寿司が美味い店がある。
私の隣の男性4人組の食事風景を見ていると、コップに焼酎をまず注いだ後、その上からビールを注ぎ足して飲んでいる。確か「爆弾」という飲み方だったような。若い方の男性は例によってあっち向いてほいといった感じで顔を横に向けて飲んでいる。長幼の序あり。斜め前方には夫婦3組とおぼしき男女6人のグループ。日本語が聞こえる。日本からやって来た60代後半、いや70代の仲良し夫婦連れがシニアの旅を楽しんでいる風情だ。生涯独身の私には望むべくもないことだが、ふと思った。私が60代後半か70代に達した時、彼らのように気のおけない連中とああした旅ができるだろうか。私にとっては高校時代の同級生の顔が何人か頭に浮かぶ。皆がその時も健康であることが一番肝心だろう。
私の後ろのテーブルに座った男性と目があった。日本人かと思ったが、常連客のようでお店のおばちゃんと親しそうに話している。韓国人だった。最初は一人だったが、ほどなく男女二人が加わり、大きな声で会話しながら飲食しだした。私が一人で寂しげに見えたのだろうか、そのうち、タコを細かく切り刻んだものとかカニをおすそ分けしてくれた。カニが実に美味かった。こういう気持ちのいい出会いがあると旅は楽しい。
さて一夜明けて再び釜山港。今朝は何とかフェリーが出るみたいだ。ほっとする。今日から9月。大学の後期の授業も後半から始まる。前期は楽だったが、後期は4コマの授業で初めて担当するものもある。だいたいの計画は頭の中にできているが、まだ細かく詰めてはいない。これからじっくり考えなくてはならない。他にもいろいろとやることはあり、8月中には帰福したかったのだ。
釜山港―博多港は概ね3時間の航路。帰途は今この項を書いている。釜山港を出て45分ぐらい経過した頃に突然、船が停止した。詳しいことは分からないが、乗員の説明によると何かエンジントラブルが起きたらしい。ドキッ。船が波間に漂い始めた。時に大きく揺れる。気持ちがいいものではない。スピードを上げて走行している時には気づかないが、結構波が高いようだ。どんぶらこどんぶらこと左右に大きく揺れる。私がフェリーを選んだのは格安料金もあるが、鉄の塊が空を飛ぶ飛行機より、船はずっと安全との思いがあるからでもあり、まさか、海の上で恐怖を味わうことになるとは・・・。隣に座った若い韓国人カップルも不安そうにしている。乗員の説明を英語で簡単に伝える。真剣に聞いていた。
5分ほど停止していたエンジンが再び息を吹き返し、フェリーは一路博多港へ。嗚呼良かった。健康で生きていること。旅の終わりに改めて考えさせられた。
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