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言葉通じずとも

  • 2016-08-28 (Sun) 07:52
  • 総合

20160828-1472338339.jpg これも前に書いたかと思うが、釜山の人はよく笑う。街を歩いている家族連れやカップル、レストランや屋台で食事しているグループ。屈託のない笑顔があふれている。私の限られた経験で言うなら、世界で釜山の人ほど笑い興じている人たちはいないのではないかと思える。韓国経済はそれほど活況を呈しているわけではないと聞くから、なぜこれほどの笑顔なのか私には分からない。釜山の土地柄とも呼べるものだろうか。
 今回行こうと思っていたところがあった。テレビドラマでよく出てくる銭湯だ。低温サウナがあって、貸与のTシャツに短パンを着用した男女が共用の部屋で寝そべったり、食事したりしている。別にエロチックな体験を求めているわけでは毛頭ない。日本にはないああいう憩いの場を一度体験してみたかったのだ。できれば写真にも収めたいと。
 ホテルの人にそんな入浴施設は近くにないかと尋ねると、目と鼻の先にあるとの返事。着の身着のままでいいとのことで喜んで出かけた。一階で入場料金5,500₩ を払って二階に。二階の更衣室に上ったところでなんだか感じが違うなあと思ったが、もう遅い。日本でも普通にある男専用のサウナだった。私の質問が舌足らずだったようだ。
 サウナで汗を流しながら、同じ年配の客と二人切りになったので、つい、言葉をかけてしまった。「日本語か英語かおできになりませんか?」。「ええ、日本語分かりますよ」といった感じで、彼は軽く頷いた。「私は日本から来たのですが、ここはテレビドラマによく出てくる男女共用の入浴施設ではないんですね?」。彼はまた深く頷いた。ただ、言葉が出てこない。しまった。彼は日本語など分からないのだ。しばらくして彼はサウナを出て行った。
 サウナ自体は嫌いではないので、水風呂とサウナを数回出たり入ったりした後、備え付けの歯ブラシでもないのだろうかと辺りを見回していると、先ほどの客が近づいてきた。寝転びたかったら、隅っこにそういう場所があると手振りで教えてくれる。私が横になる場所を探していると思ったらしい。いや、そうではなく備え付けの歯ブラシがないのかと探しているのだとこちらも手振りで返す。どうやら歯ブラシはないようだ。諦めて湯船につかっていると、店の人が私に歯ブラシを持って来てくれた。どうやら彼が声をかけて特別に頼んだようだ。私は洗い場にいた彼を探してお礼を言った。
 釜山の人はよく笑うだけではない。外国からの来訪者にかくも親切だ。いつのことになるか分からないが、私はやがて中国にもさるく旅に出かけたいと考えている。果たして中国でもこのような経験をすることができるだろうかとふと考えてしまった。
20160828-1472338221.jpg この日のランチは何度か食べたことのある冷麺に似たミルミョンのお店。5,000₩。期待にたがわず美味かった。食べる前にはさみを器に突っ込んで麺を何回か切ることも忘れなかった。こうすると、麺を気持ちよく啜りあげることができる。お店のおばちゃんが私の顔を覚えていて、「釜山によくお見えになるんですね」と尋ねてきた。そういう質問だったかと思う。この程度なら私も理解できる。ええ、これが今年3度目の訪問ですと答えたが、思ったほどはすらすらと答えることができなかった。レーメンを作るおじさんも私がこの店を気に入っていることが分かるようで、笑顔が優しい。毎日食っても飽きない味だけに、釜山にいる間はランチはここにしよう。朝昼のメニューはこれでいつも同じになった次第。

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