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black=African-American

  • 2016-07-10 (Sun) 21:51
  • 総合

20160711-1468216984.jpg 前回の項でトニー・ブレア英元首相のことを書いた。実はあれは片手落ちのコラムだった。きちんと書いておくべきことは、メディアの一員として、私自身も当時はあのイラク戦争は不可避で正当な戦争と考えていたことを書いておくべきだった。自己弁護するわけではないが、私もイラクのサダム・フセイン大統領(当時)が何らかのWMDを保有していると思ったし、フセイン政権を「野放し」にしておくことは危険と考えたからだ。しかし、イラク戦争は結果的にイスラム過激派組織が「現代の十字軍に鉄槌を」と叫ぶテロ活動の主因を作ってしまった。中東情勢に起因するテロが世界中で猛威を振るう今の現実を思う時、その観を深くする。
 そんなことを思いながら、日曜朝、英BBCのホームページをのぞくと、これまた懐かしい顔が見えた。ブレア首相の側近として、その気さくな人柄が皆に好かれたジョン・プレスコット元副首相だ。サンデー・ミラー紙との単独インタビューを転電した記事で、見出しがセンセーショナルだ。Blair Forced us into an illegal war(我々はブレアにより違法な戦争を強いられた)
 プレスコット氏はブレア政権にあって労働者階層を代弁するような存在で、ブレア氏のエリート臭を緩和し、保守党から政権を奪取するのに大いに貢献した人物だ。そのプレスコット氏がここに来て、ブレア氏が率いたイラク戦争を喝破した。“A day doesn’t go by when I don’t think of the decision we made to go to war.” とプレスコット氏は悔いていた。違法な戦争でフセイン大統領を政権の座から追放したことで、パンドラの箱を開けたとも。数日前に自身の政治判断を正当化したブレア氏の主張とは正反対の言葉だ。
                  ◇
 また、アメリカで銃による惨劇が起きた。犯人の男は単独犯で「白人」特に「白人の警察官」に対する恨みを募らせていたという。アメリカで公民権運動が起き、マーティン・ルーサー・キング師らによるあのワシントン行進があってから50年余。その就任が歴史的出来事だった黒人大統領、オバマ氏もほどなく任期切れを迎えようとしている。それなのに、アメリカでは人種、肌の色の違いに起因する殺戮事件が跡を絶たない。
 犯人の男はいわゆるテロ組織とは関係がないが、黒人こそが白人や他の人種よりも優れているのだという考え方に傾倒していたとも報じられている。男の主張、考え方の具体的なことはまだ分からないが、この国が今なお人種的に病んだ国であることを象徴する事件となったことは間違いない。日本がこの種の病根から無縁であるとは言わないが。
 日本の報道で一つ気になった点。犯人の男を「黒人」と書かずに「アフリカ系」と書いている新聞があったこと。英語では差別を助長したくないとの思いから、黒人のアメリカ人を意味する時に “black” と言わず、“African-American”と言う表現が増えているが、今回の事件の報道ではそうした配慮は意味がないかと思う。CNNもBBCも “Five white police officers were shot dead by a black man.” などと報じている。

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