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オイルインダストリー

  • 2016-02-17 (Wed) 10:43
  • 総合

 昨秋からずっと見てきた韓国のドラマ「가적을 지켜라カジョグル チギョラ」(邦題:家族を守れ)がようや終了した。いや、疲れた。疲れるなら見なければいいのだが、そういうわけにもいかない。結末が気になる。第一、主たる目的は韓国語の学習だった。日本ではもうこういう筋立てのドラマは敬遠されるのではと思いながら、ずるずると見てしまった。「事実は小説より奇なり」(Truth is stranger than fiction.)というが、「韓国ドラマは事実よりさらに奇なり」だ。人物描写があまりにもステレオタイプなのだ。この世におそらく完全無欠な善人がいないように、欠点ばかりの悪人もいないのでは。余談ながら、このドラマではそうでもなかったが、「つまみ食い」で見ている他のドラマでは韓国人女優の美しさに魅了され続けている。あれが全部整形とは思えない。ぜひ現地で拝顔の悦に預かりたいものだ。私のような庶民にはなかなかお目にかかれないだろうが・・・。
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20160217-1455673346.jpg アメリカ人のHさんから「ショウ、モービ―ディックにまつわる映画がかかっているよ。面白かった。ユーもぜひ観た方がいいよ」とメールが届いた。それで先週、映画館に足を運んだ。“In the Heart of the Sea”(邦題「白鯨との闘い」)。ネットでトレーラー(trailer予告編)を見ていたこともあって、内容というより、あの巨大な白鯨をどうやって撮影したのだろうか。まさか本物ではあるまい、とこっちの方がずっと気になった。
 Hさんが私にメールをくれたのは、私がアメリカの旅でハーマン・メルビルの名著 “Moby-Dick”(『白鯨』)を取り上げ、作品のゆかりの地も訪れていたことを知っていたからだ。この小説の素晴らしさは拙著『アメリカ文学紀行』でも詳述したつもりだ。
 “In the Heart of the Sea” は2000年に刊行されたノンフィクションに基づく。1819年に出帆した米捕鯨船エセックス号が太平洋上で巨大な白鯨に襲われ、船は沈没し、多くの人命を失う。生き残った船員は餓死した仲間を食べて飢えをしのぎ、やがて他船に救助される。エセックス号の実話の悲劇をメルビルが関係者に直接取材し、そして1851年に発表したのが米文学に金字塔として残る “Moby-Dick” という筋立てになっている。メルビルがエセックス号の最後の生き残りの老人を訪ね、渋る老人の口から人肉を貪り、生き長らえた事実を引き出していく。老人にとっても人肉を食したことはトラウマとなっており、メルビルに語ることでカタルシスを得る過程が劇的に描かれている。
 映画の中で “oil industry” という語が出てくるシーンがある。今なら間違いなく「石油産業」だが、映画が描くのは1850年頃だから、まだ石油が発見され、本格的に操業が始まる以前の時代だ。だからここでは “oil industry” とは当時文字通り、文明を灯す貴重なエネルギー源だった「鯨油産業」を指す。
 老人がメルビルに対し、「最近なんと地中から油が見つかったと聞いたよ」と驚くシーンがある。鯨油に取って変わった石油が現代文明に何をもたらしたかは今さら述べるまでもないだろう。19世紀半ばの人々が石油の登場に仰天したように、21世紀の人類が驚愕する新たなエネルギー源が現われて欲しいものだと思う。その時が来るまで生きていたいし、そのエネルギー源が温暖化問題を雲散霧消させるようなものであって欲しいとも願う。

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