- 2023-06-11 (Sun) 22:41
- 総合
最近物忘れが酷くなっているような気がする。老化現象?「実年齢7掛け論者」の身としてはそうは思いたくないが、以前ならぱっと頭に浮かんだ類の人名や物事が思い出せないことが相次いでいる。数日前から思い出せないのがオスカー・ワイルドの小説の中に出てくる主人公の名前。タイトルも正確には言えない。英国文学紀行の本を執筆した際も含め、何度か読んだことがあるにもかかわらずだ。読みやすい英語で書かれており、日本人にはとっつきやすい作品だ。
なぜ、この作品の主人公のことを思い浮かべたかというと、特段のことではない。私は今なお帯状疱疹の痛みに悩まされているが、その他の健康状態はまずまずかと素人判断している。それで昔は「私は○○ではありませんが、青年のような気持ちで生きています」と挨拶したいものだと時々考えていたことがふと脳裏をよぎったのだ。○○とはワイルドの作品の主人公。欧米でちょっとしたテーブルスピーチを求められた時などに使えるのではないかと当時は考えていた。だから、○○はいつでもすぐに頭に浮かんだ。
ところが、数日前に○○を思い出そうとしてちょっと愕然とした。出て来ないからだ。小説のだいたいの筋は覚えている。主人公は自他ともに認める美青年。だが、性根は良くなく鼻持ちならないと形容できよう。彼が恐れるのは年をとって若さを失い、その美を失うことだった。それである時、知り合いの画家が描いてくれた肖像画が自分の代わりに年を取ってくれ、現実の自分はいつまでも若さあふれる存在であり続けることに気づく。まるで願いを叶えるために悪魔と取り引きしたようなものだ。傲岸不遜の彼はやがて自分に惚れたうら若き少女を死に追いやったり、肖像画を描いてくれた画家を殺害することになる。今、こうして粗筋を思い出しながらも、○○という主人公の名前が出て来ないのが悔しいし、情けない。本棚にある著書を手にとるか、ネットで検索すれば即座に分かるのだが、それはここではしたくない・・・。もう少し自力で「悪戦苦闘」したい。
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CNNのニュースをオンラインでチェックしていたら、中国では昨今、大学や大学院で学んで立派な学歴を手にしても、社会でそれを活かせない、つまり働き口が見つからず、人生設計が描けない若者が増えているという記事を報じていた。高学歴の若者が毎年、何百、何千万人という数で社会に出てきても、経済の分け前は限られていて、平等に行き渡ることが難しい時代になったということか。記事では閉塞感に陥ったそうした若者が中国文学の祖とも言える先人、魯迅(1881-1936)の作品に共感を覚えていると報じていた。
魯迅ならば私も遙か昔に『狂人日記』だか『阿Q正伝』を読んだことがあり、何となく親近感を抱く人物だ。記事を読んで彼の名前は中国語で何と発音するのだろうとネットで調べていて、彼は中国浙江省紹興の出身であることを知った。地名は見覚えがある。おお、あの紹興酒の紹興ではないか。今頃気づくとは何と愚かであることよ! 紹興酒は久しく飲んでいないが、現役の頃に中華料理店に足を運ぶとよく飲んでいた。あの甘ったるい印象の醸造酒が魯迅先生と因縁浅からぬお酒であるとは! 帯状疱疹の痛みから解放された暁にはぜひ紹興酒を買い求め、魯迅先生をしのぼうと決めた。
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