- 2023-04-16 (Sun) 22:32
- 総合
沖縄県・宮古島沖の海上で発生した痛ましい陸上自衛隊のヘリ事故。テレビや新聞報道で次のような見出しを目にした。「沖縄陸自ヘリ事故 複数の人らしき姿を発見」。私はこの見出しを見た時の第一印象は「え、生存者が見つかったの?それなら素晴らしい。生きていればいいけど」というものだった。だが、そうではなかった。私は「人らしき姿」という表現に戸惑わされたのだ。「人」ならば生きている人だろうと思ったからだ。上記の見出しが「複数の遺体らしき姿」だったらそういう考えは浮かばなかった。もちろん、まだ「遺体」であると確認できていないのだから、こういう表現はできないし、すべきではない。
そうしたことを承知の上で、関係者や視聴者(読者)に残酷な期待を抱かせないためにも、もっと適切な表現ができたのではないかとも思う。といっても今この時点で私に名案はないが、例えば「複数の人体らしき姿を発見」のような表現は頭に浮かぶ。思い出したのは英語でこういうときには body を使い、その場合には「肉体」ではなく「遺体」「死体」を意味するということを。そう思って手元にある英字紙ジャパン・ニュースを開くと、陸自ヘリ事故が一面トップで扱われていた。読売新聞からの翻訳記事だった。袖見出しで Bodies believed to be inside sunken wreck(沈んだ機体の中に遺体と思われるもの発見)とある。本文中では… also discovered what appear to be bodies in the fuselage-like object …という文章が見える。事件・事故を伝える英文記事を読んでいて、body や bodies という語を目にすると今でもドキッとする。
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もう一つ英語に関する話題を。日曜日の朝刊、国際面に目を通していたら、アメリカの政治・社会の分断を論じたコラムが掲載されていた。書き出しの文章で手が止まった。「ウォーク(Woke)」という言葉をご存じだろうか。wakeの過去形で、直訳すると「目覚めた」となるが、人種差別をはじめとする様々な社会問題に意識が高い人のことを指す」とあった。
内容にはもちろん異論はない。私が気になったのは woke の読みを「ウォーク」と付記してあったこと。woke ならば「ウォゥク」とでも記した方がベターだろうと思ったのだ。ウォークという読みなら、多くの日本人は普通「歩く」を意味する walk が頭に浮かぶのではないか。ウォゥクという読みも奇異に映るかもしれないが、敢えてカタカナで記すなら、ウォークよりウォゥクだろう。walk[wɔːk]とwoke[wouk]の母音は日本人には紛らわしいが異なる音だ。
韓国語を学習していると、オの母音に二種類あり、口を軽く開けて日本語のアの口で発声するオと、唇を丸くすぼめ前に突き出して発声するオがあることを強く意識せざるを得ない。自分で話すときは両者の違いを意識してオの音を出そうと留意する。NHKラジオの韓国語の講座から流れてくる文章にオの語彙がある時、口を開けたオかすぼめたオか即座に判断することは、私には今も難しい。
翻って日本語の母音。アイウエオの5つしかないし、口の開き具合は気にしないでいい。外国人には学習しやすい言語であろうが、我々が外国語を学習する際には「追い風」とはなってくれない。恨んでいるわけでは決してないが。
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