- 2023-03-29 (Wed) 22:36
- 総合
春めいた日々が続いている。帯状疱疹に苦しむ身としてはありがたい。毎朝夕、内服薬を飲んでいるが、効果があるのかどうか、自分では分からないのが悩ましい。ときが癒してくれるのなら、薬はもういいのではと思わなくもないが、そういうわけにはいかないのだろう、きっと。もうすぐ4月、多くの人にとって新たな挑戦が待つ門出のときだ。私も心機一転、中学校での教師(非常勤講師)の仕事に挑みたいのだが・・・。
せめてもの慰めは上記の仕事に再度就くため、健康診断書の提出を求められ、先週末、医師からスムーズに「就業可」の認定を頂くことができたことだ。昨夏の健診では血糖値が高く、再検査を余儀なくされ、辛うじて就業可となった経緯がある。それ以来、断酒を(何回目?)決意し、粗食を心がけていることが功を奏したようだ。
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月2回のオンラインの英語教室。英語の小説を読む教室は私にとっても楽しいひとときだ。アガサ・クリスティの戯曲を読み終えた今、読み始めたのはアメリカで毎年出版されている栄えあるオー・ヘンリー賞を受賞した世界の実力派作家たちの短篇を集めた作品集。短篇だから読みやすく、英語に翻訳された非英語圏の作家の作品にも触れることができる。
最新版の “The Best Short Stories 2022” でまず取り上げたのは Daniel Mason氏の “The Wolves of Circassia” という作品。米カリフォルニア州を舞台にコロナ禍に見舞われた住民の暮らしが描かれており、興味深かった。日本と同様、日常生活で常にマスクを強いられていたかどうか分からないが、閉塞感は社会全体を覆っていたようだ。行政が発する不要不急の外出を自粛するよう求めた要請が英語では the order to shelter in place という表現であることを知った。
この作品には作品名のチェルケシアというロシア南部にかつて存在した国が登場する。旧ソ連軍の侵略で消滅したという。新聞社の国際部に長く在籍していたもののこうした悲しい歴史は知らず、不明を恥じるほかなかった。
主要登場人物のセイニという南太平洋の島国であるトンガ出身の女性は痴呆症の老医師の介護の仕事に従事している。コロナ禍により、自分自身の家族とは離れ住み込みを余儀なくされている。あるとき、老人と彼の孫を連れ出した午後の散歩の途中、散策路の心地よい木陰で居眠りし、二人を見失う。慌てふためく彼女の心理が次のように描かれている。… and yet she knew that would mean admitting more than just a momentary lapse, it would mean renouncing a central premise that had sustained her, that the world was something that could be tended.
オンライン英語教室でもこの箇所はどういう日本文に仕立て上げることができるだろうかと受講生と話し合った。なかなか難解だ。――彼女が面倒を見ることを請け合っていたお爺さんとその孫をうかつにも見失ってしまったとしたなら、それはちょっとした手落ちというより、彼女を支えてきた信念の中心にある、世の中は何とか御していけるものだという前提を否定するものだった――。コロナ禍でこれまでの人生で揺るぎないものと考えてきた生き方、考え方がぐらついた人々は少なくないのだろう。私も?
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