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女には「命」の髪の毛が2000円?!

  • 2022-04-25 (Mon) 13:47
  • 総合

20220425-1650861861.jpg どうなるのかウクライナ情勢。連日NHKテレビが報じているが、ウクライナ周辺の地図はいまもすっと頭に浮かばない。モスクワには取材で一度だけ訪れたことがあるが、東欧と呼ばれる国々には縁がなく、唯一足を運んだことがあるのは旧ユーゴのボスニア・ヘルツェゴビナぐらいか。これが今も正しい国名であるのかさえ自信がない。後でチェックしなくてはならない。
 中南米にも取材経験がないので、カリブ海周辺も含め、中南米の国々の位置関係を頭の中に正確に地図として広げるのは難しい。正直に書くと、あまり興味がないので致し方ないかと思う。残り少ない人生、中南米の国々にこれから足を運ぶことはまずないだろう。残念ではあるが。
 オンラインで続けている英文小説を読む英語教室。このところ、オー・ヘンリー賞受賞の優秀作品を読み続けている。いずれも短篇の作品なので読みやすいことこの上なし。日曜日に読んだのは “Scissors” というタイトルのベネズエラ出身の女性作家の作品だった。私が購入したペーパーバックの本ではわずか5頁にも満たない短さ。先述した通り、行ったことのない南米を舞台にした作品だから、ネットでベネズエラや隣国の地図や写真をチェックしながら読み進めた。読み進めたといってもあっという間に読了とあいなった。
 作品は困窮している祖母、母親、娘の3人が国境を越えたコロンビアの町にバスで行き、自分たちの髪の毛を売って何とか食料品を購入しようとする物語。彼女たちにはもはや頭髪しか売るものは残っていないようだ。私の手が止まったのは次の記述。“We’ll give you sixty thousand pesos for yours, a little less for your mother’s” これは髪の毛を刈り取る業者が娘に言う言葉。自分の髪の毛を売って手にできるのが6万ペソ。コロンビアペソの通貨価値など見当もつかない。ネットで検索して調べてみると、1 コロンビア・ペソ は0.034 円 とあるから、60,000×0.034=2,040円となる。女性にとっては「命」のような髪の毛が2千円ぽっちとは!ベネズエラの人々の困窮ぶりが垣間見える。
 折も折、読売新聞の国際面にベネズエラの人道危機が報じられていた。政治的、経済的な混乱から南米の周辺国に逃れる人たちが急増しており、その数はここ数年で全人口の2割に当たる600万人に達しているとか。この国は世界有数の産油国であるにもかかわらずだ。
 この作品は不思議なところがあった。不思議というか、何かのミスではないかと思うのだが、ネットでは私が手にしている本には掲載されていないパラが最末尾に少し続いていた。その部分は余韻たっぷりであり、味わい深い終わり方になっていた。ネットでこの部分を読むと、本のエンディングがさすがに物足りなく感じる。この作品はネットでも読めるため、コロナ禍での英語教室には有り難く、だから選んだ事情もある。ネットで確認しなかったら、“Scissors” という作品に対する印象は異なったものになっていたことだろう。
 それはともかく読書はいい。語学の勉強に勤しんでいると、それはそれで充実感はあるのだが、辞書で調べるなどして覚えたと思っている語彙を数日後にはすっかり忘れてしまっている。そういうフラストレーションに悩まされる身には読書は気が休まる。依然動きの取れない5月の連休には夏目漱石か志賀直哉の名作を久しぶりに読もうかと考えている。

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