- 2022-03-01 (Tue) 20:52
- 総合
ウクライナ情勢。幼い子供がロシア軍のロケット攻撃で死亡したニュースなどを目にすると、胸が締め付けられるようで何とも陰鬱な思いに沈む。数日前かのこのブログで第二の冷戦のスタートかと書いたような気がするが、それどころか第三次大戦の勃発さえ危惧される事態だ。挙げ句の果てはロシア軍による核兵器の使用さえ懸念される。時代は21世紀。戦争の世紀は過ぎ去った20世紀のことではなかったか。
ウクライナの人々の苦難を思いやると拙ブログをアップデートする気など失せてしまう。とはいえ、このブログは私にとって備忘録でもあるのだから、きちんとその時々の思いを記しておきたい。数年後に振り返った時に、ああそんなこともあったな、懐かしいなあとほのぼのと振り返りたいが、今のウクライナ情勢はとてもそういう心境にはなれないだろう。ウクライナ、ロシアの和平交渉が奇跡的に進展することを心から願いたい。そしていつか、プーチン大統領が無垢の市民の尊厳を踏みにじった蛮行で歴史的に断罪されることを願う。
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オンラインで細やかに実施している毎月2回の英語教室「短篇小説を読む」で最近取り上げたのは、“Endangered Species: Case 47401”という短篇。タイトルは物々しいが、米国に暮らす黒人女性が転居した白人住民多数派のコミュニティーで感じるようになった違和感がテーマとなった作品。私はそうした違和感が理解できるとまでは言わないが、南アフリカの白人至上主義の究極的なアパルトヘイト(人種隔離政策)の終焉を現場で取材した身としては興味深く読んだ。
作品の中に Billie Holiday という人名が出てきた。ジャズに明るい人なら知っている人だろうが、私は正直、男かな?と思ったほどの門外漢。ネットで調べて、1930―50年代、アメリカを代表する女性ジャズ歌手であることが分かった。麻薬に手を染めていたこともあったらしいが、米政府を相手に人種差別の非を敢然と問うた勇気ある先駆者であることも。1959年に44歳の若さで病没している。公民権運動の嵐が吹き荒れ、キング牧師があの有名な “I have a dream.” の演説を残す4年前だ。
ネットでこの人物のことをチェックしていたら、今、福岡・天神の映画館で彼女の半生を描いた作品がかかっていることを知った。“The United States vs. Billie Holliday” というタイトルの映画。タイトルからして凄い!
先週末、映画館に足を運び、その映画を観た。セックスシーン、麻薬、暴力、リンチの凄惨なシーンも盛り込まれており、気安く推奨し難い点もあったが、あの国が抱えている人種問題が如実に描かれていた。彼女が米政府から忌み嫌われたのは “Strange Fruit” (奇妙な果実)と呼ばれる歌をステージで歌わないよう迫られても、それを拒絶したこと。南部では奇妙な果物が木からぶら下がっていると歌われた果物とは何か? 白人至上主義者グループのリンチに遭い、木から吊される黒人の亡骸のことだ。
作品の中では今では絶対タブーの黒人蔑視の表現が頻出する。黒人同士がお互いを罵る時にも口にする。このブログで紹介する分には差し支えないないだろう。 “Fuck you, nigger!” 今アメリカでこのような暴言を吐いたなら、即アウトだろう! いやどこであれ。