Home > 総合 > “twisties”

“twisties”

  • 2021-08-02 (Mon) 08:50
  • 総合

20210802-1627861815.jpg 旧聞に属する話題で恐縮だが、東京オリンピック男子体操。団体では銀メダルに終わったが、個人総合では若きエース、橋本大輝選手が初めての金メダルを獲得した。まだ20歳前の若さ。内村航平選手の後継者の誕生だ、なんてことはこのブログでとっくに書いていたと思っていたが、友人とラインでやり取りしていたに過ぎなく、このブログでは何の言及もしていないことに気づいた。
 私は高校時代に器械体操クラブに所属して、日々練習に励んでいた。だから体操には懐かしさもあり、熱心に見入ってしまう。私の体操自体はお粗末極まりないレベルだったが、床運動ではバク転や宙返りも何とかこなしてはいた。あの頃の体型が欲しい!
 橋本選手が個人総合で逆転優勝を決めた鉄棒の演技を見たが、素晴らしいの一言だった。最後の着地で少し動いたが、数々の離れ業は見事に決め、実に雄大な演技だった。身長は166㌢らしいが、もっと高くあるように思えた。手放し技をあれほど綺麗に正確に決めることができるのは人間業とは思えない。一つ小さなミスが出たら、大けが、場合によっては命にかかわる大事になるだろう。
 私はそんなことを考えながら体操競技を見る。床運動や平行棒など他の種目でもそうだが、特に危険が一杯なのは男子では鉄棒が筆頭だろう。女子では文句なしに平均台か。あの幅10㌢の狭い木製の台の上で跳んだり、宙返りしたり、これも人間業とは思えない。全然「平気ん台」ではないではないか。そんなことを考えていたら、女子体操の第一人者でアメリカチームのエース、シモーン・バイルス選手が途中棄権したというニュースに接した。
 団体総合決勝で最初の跳馬を跳んだ後に急遽、次の種目から欠場したのだという。米国チームは「心の健康の問題」をその理由として挙げていた。これだけではよく分からない。外電を読んでその理由が分かった。彼女は体操競技関係者が言うところの “twisties” に悩まされていたのだとか。“twisties”とは “a loss of air awareness during routines” と説明さていた。日曜日のジャパン・ニュースが掲載していたAP電が分かりやすかった。次のような記述があった。Biles said on social media Friday that she is dealing with what is defined as “the twisties”: the sudden inability to feel comfortable while twisting in midair.
 跳馬(vault)や床運動(floor exercise)などの種目で空中でひねりを加えたり、宙返りを試みている時に、突然、脳からの信号に身体がうまく調和しなくなるということのようだ。両者がかみ合わなければひねりも効かないだろうし、着地も不安だ。空中に浮かんだ状態で突然そのような事態に陥れば、着地に失敗し、重大な事故を招く危険性もある。その恐怖感は察して余りある。
 世界の一流選手がなぜこのような異常事態に陥るのか。素人なりに考えても、おそらく心理的な要因が絡んでいるのだろう。“twisty”は辞書には「曲がりくねった」という意味が載っている。ゴルフではグリーン上のパッティングなどの場面でプレッシャーから簡単なパットを外したりする現象をイップス(yips)と呼ぶことが広く知られている。将来、体操や類似の過酷なスポーツの場で上記のような突然の機能不全の出現をトィスティーズと呼ぶことが当たり前のことのようになるのだろうか。

Home > 総合 > “twisties”

Search
Feeds

Page Top