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日本酒

  • 2014-04-28 (Mon) 08:09
  • 総合

 世はゴールデンウイークの到来だ。気候も良くなり、絶好の行楽日和ではある。
 といっても、こちとら、別に遠出のあてもない。したくもない。アフリカやアメリカ、イギリスの旅でもう十分、遠出の旅は味わった。いや、あの時はほぼ毎日のように次の目的地の足の便、安宿の確保に追われ、たえず、パソコンか携帯電話に向かっていたような気がする。今そういうことから解放されて日々安穏と過ごせることを神に感謝の思いだ。
 しかしながら、狭い我が家はガラクタの山だ。よし、この世間の連休(私はこのところずっと連休の人生なのだが)を利用して部屋を片付けようと思い至った。その気になれば訳ないのだが、いや、大いに訳ありだ。不要なものを捨てればいいだけのことだが、手に取って眺めていると、どうも捨てるのは・・・という気になってくるのだ。
 いや、そろそろ心を鬼にして片付けよう。そうでないと、また、秋の行楽シーズンの折にまた同じようなことを書いているような気もしないでもない。いや、もう十分この種のことはここで書いたような気もするが、恐ろしくて読み返す気も起きない。
 遠出はするつもりはないと書いたが、ちょっとした旅ならする。旅と呼べるものでもないが。先週金曜に鹿児島・川内(せんだい)まで日帰りした。九州新幹線だと博多からわずか1時間20分程度だ。同じ南九州でも宮崎とかくほども違う。
 川内に行ったのは、岩手・釜石の知己Sさんが関係している植物の研究会で川内に来られたからだ。福岡まで足を延ばすことは無理だったため、それでは私が川内まで馳せ参じましょうとなった次第だ。新幹線を利用すれば、夜一杯やって、そのまま日帰りも十分可能。飛行機で来られたSさんとホテルのロビーで待ち合わせて、近くの居酒屋さんをのぞいた。土地勘もないので、ホテルのフロントの娘さんに聞いた店だった。
 午後5時過ぎという時刻ゆえに客は私たち二人だけ。とりあえずビールで喉を潤し、Sさんおもむろに「ママさん、日本酒は何がありますか」。「うちは焼酎だけしかないんですよ」とママさん。しまった。確認しておけば良かった。Sさんは酒どころ、東北の人だ。日本酒党で焼酎は飲んだこともない人だった。ママさんに近くの酒屋から急ぎ、日本酒を運んでもらい、事なきを得た。
 Sさんは津波被害で今は仮設住宅に住まわれているが、かつて釜石では有名な旅館を営まれていて、私は盛岡支局勤務時代に知り合った。植物研究で知られ、70歳を目前にしてもその意欲に衰えはない。Sさんはマツタケ取りのプロでもあり、その話で盛り上がった。
 私の郷里はマツタケとは無縁。実は今年に入り、Sさんから手製のマツタケ入りの日本酒を頂いていた。これが実は正直に言うと、どうも生椎茸を入れた酒を飲むようでどうも美味という感じではなかった。それでその感想はこれからのこともあるので、ありていに告げた。「あのお、あのマツタケ、あぶって入れたらどうでしょうか。土瓶蒸しのような土瓶酒になったりして・・・」と私。「いや、それは無理です」とSさん。
 朋有り、遠方より来るで、楽しいひと時を過ごし、帰途に就いた。ナップザックの中にはSさんのお土産、釜石の純米大吟醸を入れて。昨日曜の夜、冷蔵庫で冷やしておいたその日本酒を頂いた。美味かった。今度の酒には幸いマツタケは入っていなかった。

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