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英語でさるく 那須省一のブログ

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藤井八冠→七冠

20240621-1718974428.jpg 仕事を終え、疲れて帰宅。風呂にお湯をためて、夕食の準備でもせねばと思いながら、パソコンでYouTubeをチェック。お、将棋の叡王戦を生中継している。藤井聡太八冠が叡王のタイトルを防衛すべく、伊藤匠七段の挑戦を受けている。21歳の同い年。小学生の頃からのライバルだ。現在地はだいぶ開きがあるが、これから長く宿敵と称されることになるかもしれない。判官贔屓としては伊藤棋士を応援したい気もするが、好青年の藤井棋士の活躍も願いたいしと、家事はすっかりそっちのけで両棋士の激突を見守った。
 私が見始めた時は画面のAI(人工知能)は藤井八冠が優位にあった。最後には藤井八冠がそのまま押し切り、防衛に成功するのだろうなと思っていた。ところが、終盤で八冠が意外な手を放ち、AIの優位判定が挑戦者に大きく振れた。形勢逆転に解説の二人のプロ棋士も慌てふためいていた印象だった。ど素人の私には本当に伊藤棋士が優位となったのかよく分からなかったが、藤井棋士の苦境が彼のらしからぬ表情から見て取れた。
 勝敗が決した後のお決まりの記者会見。将棋専門記者が勝者、続いて敗者にマイクを向けてインタビューするのだが、勝者はともかく、敗者にも情け容赦のない質問の数々は少し酷ではないかと思うほどしつこかった。これで藤井八冠は一冠を奪われた。彼のことだから、来年には八冠に返り咲いているかもしれない。いや、伊藤新叡王もかなりの実力者だから、そうはならないかもしれないし、残る七冠もそうそうたる棋士が奪取を目指しているから、一つ一つを防衛すること自体が至難の業だろう。いずれにせよ藤井棋士が八冠の座から追われた記念すべき一戦を「目撃」できたことは悪くないと思う。
                  ◇
 非常勤講師とはいえ、日々教壇に立つようになって以来、楽しみな晩酌は控えるようになっている。金曜夜と土曜だけは心置きなく杯を傾ける。暑いこれからは生ビールがますますうまくなるのだが、一つぐらいは禁を維持したいと思い、大好きなビールは一人酒では飲まない。従って焼き鳥屋で飲む時はハイボール、家飲みする時は黒霧島。どちらも甲乙つけがたいほど、美味い。
 最近食に関して一つ気づいたことがある。私はらっきょう酢を好んで使っている。酢には他にもさまざまな種類があることは承知していたが、ずっとらっきょう酢一筋だった。残念ながら、らっきょう酢はスーパーやコンビニには置いてない。それで量販店で買い求めている。量販店はちょっと遠いところにあるので、リュックを背負い、散歩がてら出向き、1㍑のボトルを2本購入している。先日も2本買おうとしてふと、リンゴ酢に目をやった。リンゴ酢はまだ使ったことがない、試しに使ってみるか。
 タマネギをむいて切り、いつものらっきょう酢ではなく、リンゴ酢に漬けた。念のため、ハチミツをすくってタッパーに落とした。これで甘みが増すだろう。さて、翌日、楽しみにタッパーの蓋を外し、タマネギを食してみる。げっ、まずい。身体にいいと分かっていても、これは食べる気になれない。漬けがたりないのか。もう一晩寝かして、翌日、箸をのばす。だめ、依然としてとても食べる気にはなれない。嗚呼、決して安くはなかったハチミツも無駄にしてしまった。やっぱり、らっきょう酢にはかなわないようだ!

「ハッピーバースデー」とは口が裂けても・・・

 米大統領選。11月5日投票の本戦まではまだ間があるが、YouTubeをのぞくと、バイデン大統領の民主党と、トランプ氏を擁立する共和党のつばぜり合いが次第に熱を帯びつつあるようだ。両者ともに党の大統領候補者として決定したわけではないが、二人が本戦で相まみえることは実質上間違いないのだろう。
 米国の政治。何度かこのブログで書いたかと思うが、またあのトランプ氏が大統領選の有力候補ともてはやされていようとは信じ難い。悪夢のような米国政治の流れだ。なぜ、前回大統領選後の2021年1月に首都ワシントンを騒乱状態に陥れた張本人のトランプ氏が、また不倫の口止め料を隠すために業務記録を改ざんした罪で有罪評決を受けた人物が大統領に再び選ばれる可能性さえあるとは。法的な問題はよく分からないが、もっと分からないのは誰が見ても米国にとっても、そして世界にとっても好ましからざるとしか思えないトランプ氏を一定数支持する米国民が存在し続けるという現実だ。
 これまで米国内の世論調査では再選を狙う民主党のバイデン大統領を終始、共和党のトランプ氏がリードしていたように思えるが、最近では先述した有罪評決が影響したのか、バイデン氏がわずかながら逆転したとの調査も出始めている。YouTubeを見ると、なぜか分からないが、トランプ氏に遂に見切りをつけたという米有権者、それも共和党に近い人々の声が次々に流れてくる。例えば、「私はこれまで一貫して共和党支持者だった。2016年も2020年もトランプ氏に投票した。しかし、今回はバイデン氏に投票する。この国の憲法をないがしろにし、民主主義の根幹を否定するトランプ氏をこれ以上容認することは絶対にできない」という男性有権者の声など代表的なものだろう。
 こうしたYouTubeを見ていると、11月の大統領選でバイデン大統領がトランプ氏を再び破るのではないかという期待さえ抱かせる。さて、どうだろうか。YouTubeは視聴者の趣向に沿って流れてくるとも聞く。トランプ氏を好ましく思っている視聴者のパソコン上のYouTubeではバイデン氏を罵倒する番組が流れているのだろうかしら。
 バイデン大統領は今月7日、第2次大戦の激戦地、ノルマンディー上陸作戦のフランス北西部のオック岬を訪れ、米国民を念頭に演説している。多くの米兵がドイツ軍を撃退する際に命を落としたことに触れ、米兵の無私の犠牲があってこそ今の自由や民主主義があるのであり、我々もいかなる侵略に断固として戦う責務があると訴えた。名指しこそしなかったものの、ロシアのウクライナ侵攻に対し、米国のウクライナ支援継続に否定的なトランプ氏を糾弾する意向が色濃くにじんでいた。
 一方のトランプ氏は自身に近い保守的なテレビ番組でつい先日、「中国であれ、ロシアであれ、ホワイトハウスに賢明な大統領を据えれば、問題は簡単に解決できるのだ。だが、米国内に存在する内なる敵こそ米国にダメージを与えている」と述べ、バイデン政権や民主党陣営をなじった。傲岸不遜とはトランプ氏のためにある言葉なのか。とにもかくにもこの秋にはバイデン大統領が再選されることを願うが、大統領は御年81歳。米国民でなくとも健康状態が気がかり。共和党は今後、バイデン氏の高齢問題を改めて責め立てるだろうが、トランプ氏にしても14日にめぐってきた誕生日で78歳となっている。

プラットホーム

 中学校や高校で英語を教えるようになって、英語の他動詞、自動詞の差異について、改めて意識することが増えた。自分ではもう十分理解しているつもりでいても、紛らわしいケースがあり、落ち着いて考えを整理することがよくある。
 余裕があれば聴くようにしているNHKラジオの英会話講座。「ボキャブライダー」という一回5分の講座で4つの語を例文とともに紹介している。リスニングの鍛錬になる。先日はform という語が紹介されていた。「形を成す」「できる」という動詞としての form だ。聴いていて、この語に他動詞と自動詞の二つの側面があることに気づかされた。「午前9時までにはそのラーメン店の前に長蛇の列ができていた」という英文は “By 9 am a long line had already formed in front of the ramen shop.” とされていた。
 私が普通に英訳すると、“By 9 am a long line had already been formed in front of the ramen shop.” となるかと思う。formを他動詞の「~を形成する」ととらえ、受動態の表現にするのが手っ取り早い気がする。「長蛇の列が形作られた」とするのだ。改めて辞書をひくと、「生ずる」「でき上がる」という自動詞の側面もある。なるほど、自動詞だと “a long line formed” という文章ができるわけだ。私の辞書には次の例文が載っていた。The plan slowly formed in his mind.(その計画は彼の心の中でゆっくりと形をなした)。了解!
 form と言えば、これも最近思いを致したことがある。通勤で駅に向かって歩いている時にふと思った。プラットホームって英語では何と言うのだろうか。ひょっとしてplathome? いやこんな語は見たことがないような。辞書で確認するとplatformだった。他には「演壇」「舞台」「(政党の)綱領」などの意も。原義は「平面図」「計画」らしい。
 「1番(プラット)ホームに電車がやって来ます」という駅でのアナウンスは、「1番(プラット)フォームに・・・」と言った方が原義に忠実ではないかなどと思ったりもしたが、そうなれば、多くの人が困惑することだろう。「ホーム」の方が「我が家」を連想させ、ぬくもりを感じさせる印象があるし。
                  ◇
 泣き言は書きたくないのだが、最近、背中の帯状疱疹がまた痛むようになっている。日中はいいのだが、明け方と寝起きに背中や胸が重苦しく感じる。以前にもこういう感じはあったのだが、回復に向かっていると思っていただけに、このところの重苦しさはちょっとよく分からない。目が覚めて仕事(雑用)に向かえばそうは気にならなくなる。日中教壇に立っている時はすっかり忘れている。
 発症してから一年半が経過する。皮膚科や内科には何度も足を運んだが、らちがあかなかった。ペインクリニックで高価なブロック注射も打ってもらったが、今の自分がある。いつぞや、読売新聞紙上で帯状疱疹の地道な治療に当たっている医師の記事を読んだことがある。ネットで検索した。長年の研究成果は「宮崎スタディ」と呼ばれ、宮崎県日南市で診療所を営んでおられるとか。日南市は宮崎市や郷里の西都市からは離れているので、訪れたことはなく、土地勘もない。学校の仕事が夏休みに入る来月末にでも訪ねてみようかと思い始めている。藁(わら)にもすがる思いだ。

久しぶりのしぶこスマイル

 南アフリカで先週実施された国民議会(下院・定数400)の総選挙。予想通り与党のアフリカ民族会議(ANC)が苦戦を強いられ、ネルソン・マンデラ氏に率いられて、アパルトヘイト(人種隔離政策)から決別し、民主国家が誕生した1994年の総選挙以来維持してきた過半数の議席数を初めて割った。ANCは依然、第一党の座は確保したものの、ANCの栄光と威厳は地に落ちたと表現したら言い過ぎか。
 総選挙の投票率は約58%。前回2019年の投票率66%から更に落ち込んだ。全人種による初の総選挙が実現し、南ア全体が高揚感に包まれた1994年の投票率は約86%だった。私は当時読売新聞のロンドン支局に勤務していて、応援の選挙取材でヨハネスブルクを再訪していた。投開票の夜、タウンシップと呼ばれていた黒人居住区にも一人で足を運んだが、普通だったらあまりに危険で行かなかっただろう。だが、タウンシップの人々はANCの圧勝を信じ、貧困からの脱却の予感に酔いしれていた。私のカメラを見つけた子供や若者たちが笑顔で群がってきたことを覚えている。
20240603-1717414839.jpg あれから30年。ネットで連日、南ア発のニュースをチェックしていたが、南アの国民、特に圧倒的多数派の黒人層がANCに抱く失望感は深かったようだ。彼らの苦しい暮らしが一向に改善の兆しが見えず、これからも期待が持てないことがANCからの離反につながったことは間違いないと思う。先行きの視界も不良。
                  ◇
 久しぶりにプロゴルフをテレビで早朝というか未明から観戦した。アメリカで行われていた渋野日向子プロ(25)に復調の兆しが見られていたからだ。最終日を迎えてトップは米国と豪州、タイの選手3人で5アンダー。渋野プロことしぶこちゃんは首位から2打差の4位からスタートした。
 ところが、優勝したのは彼女の一つ前の組、5位の2アンダーから出た笹生優花プロ(22)。上位選手が難コースにスコアを崩す中、笹生プロは最終日もアンダーパーで回り、通算4アンダーで見事に優勝。彼女は3年前にもこの大会を制しており、日本人プロとして男子を含め、メジャー大会で初の2勝を記録した。
 私は副音声で現地のアナ、解説者の実況を聞いていたが、笹生プロの鉄壁のプレーを絶賛していた。日本人の父親、フィリピン人の母親を持つ笹生プロはまだ22歳の若さ。これからどれだけ勝利数を重ねるか楽しみだ。しぶこちゃんも随所で粘りのプレーを見せ、通算1アンダーで2位に食い込んだ。彼女は笹生プロの一つ後の組でプレーしており、プレーを待つ間に笹生プロのグリーン上でのパットを応援するすがすがしい光景がテレビ中継で流れた。現地のギャラリーもしぶこちゃんのシンデレラスマイルに魅了されていた。
 アメリカを舞台にした女子ゴルフはこれまで韓国勢の活躍が目立っていた。日本勢は正直、特に最終日のプレーがひ弱な印象だったが、笹生プロやしぶこちゃんの奮闘は応援のしがいがあった。最終日のリーダーボードを眺めると、上位11人のプロのうち、日本人の名前が5人も。男子プロの低迷をあざ笑うかのような活躍だ。サッカーにバスケット、バレー、卓球。男どもは大和撫子(我ながら、何という呼称!)を見習うべきか!

レジェンドでさえ

20240529-1716941827.jpg 先の日曜、久しぶりに近くの香椎浜のジョギング路を散歩した。本当はゆっくりジョギングをしたかったのだが、背中の帯状疱疹が完治しておらず、走る気にはなかなかなれない。正直言って、浜辺を散歩する気になっただけでも感謝したい。
 好天にも恵まれ、気持ちよく散歩できた。短パンにポロシャツ。こういう出で立ちも久しぶりに感じる。日差しはそうきつくはなかった。ゆっくり歩きながらふと思った。太陽光は光合成をする植物だけでなく、人間にも欠かせない「栄養源」ではないかと。
 こういうことを考えたのはちょうど今、太陽光が重要なファクターとなっている小説を再読しているからだと気づいた。一か月ほど前に以下のことをこのブログで書いた。――細々と続けているオンラインでの英語教室。現時点では県外にお住まいの女性が2人、月2回の教室を受講頂いている。5月からは以前に読んだことのあるカズオ・イシグロ氏の小説 “Klara and the Sun”(邦題『クララとお日さま』)に再び挑む。読んでみたいとの希望があった。私にしても良作は何度でも味わいたい。これまで気づかなかったことに気づく可能性もあるだろう。それが楽しみでもある。――
 この小説に登場するAF(Artificial Friend)と呼ばれる人間型のロボットは近未来の社会で子供たちの遊び(勉強)相手となる役割を担うのだが、動力源は太陽光という設定。太陽光がヒロイン、クララという名の心優しいロボ友の命脈を握っている。決めた。今夏はせいぜい香椎浜のジョギング路を歩き、背中に残る帯状疱疹を根絶しよう。(そんなことが可能なのか医療ど素人の私には分からないが、信じる者は救われる、実践してみようではないか。
                  ◇
 20240529-1716943928.jpgYouTubeで楽しんでいる遊戯は麻雀だけではない。将棋もよく見る。藤井聡太八冠のタイトル防衛戦は時間が許す限り見ている。素人の私には次の一手はほとんど読めないが、たまに当たったりすると嬉しくなる。まあ、数限りない可能性の中から最善手を選ぶ八冠と競っても詮無きことは百も承知している。聡太八冠があまりに無双しているので、気づくと彼の対戦相手を応援していたりする。判官贔屓だろう。
 囲碁は残念ながら遠い存在だ。石の動かし方はだいたい分かっているつもり。囲碁の本も何冊かは本棚に埋もれている。新聞社の盛岡支局に勤務している時、囲碁の上級者に何回か教わった記憶もある。NHKテレビの囲碁番組で学ぼうとしたこともある。だが、途中で投げ出してしまった。将棋よりも(私には)ずっと難解に見え、じっと碁盤を凝視することができない。(碁盤と碁石は今も大切に保管している)
 読売新聞夕刊のコラムに一時代を築いた人々の足跡を辿る「レジェンド」という読み物があり、名誉棋聖の小林光氏(71)を取り上げていた。私も名前ぐらいは知っている棋士だ。日本の囲碁界を牽引してきた文字通りレジェンドである小林氏は70代になった今もAI(人工知能)を活用した囲碁の勉強に取り組んでいるとか。「碁はライフワーク。勉強せずにはおられない。本当に碁は面白い」と語っておられる。
 あの小林氏でさえそう思われるのであれば、凡人の私などは何をか言わんやである。外国語習得の道をまだ当分は模索するのみだ。

立直が reach?

20240525-1716629378.jpg 5月も後半となった。ずっと台湾の旅が心にあり、日々、ネットで格安チケットを検索している。いや、正確にはチケット会社からしょっちゅう格安チケットの案内が届いており、その都度クリックして確認している。格安チケットとは呼びがたい状況が続いているが、最近届いた案内では燃油サーチャージが来月にはまた値上がりする見込みであり、航空券は今月中にお買い求めをとうたっていた。気が滅入る一方だ。
 そこで私は考えた。今夏も台湾の旅は諦めようかと。いつか格安チケットが本当に格安になるときがやってくるのではないか。何の根拠もないが。もう一つの理由は今秋、ソウルから韓国人の友人が夫妻で来福する予定になっている。私は二人を九州観光でもてなしたいと考えている。頭に今あるのは福岡2泊、宮崎2泊、別府2泊といった旅だ。福岡と宮崎はだいたいのところは頭に浮かんでいるが、別府は土地勘がないから現地調査をせねばと思っている。だから、学校が夏休みに入ったら、別府をぶらぶらして最適の湯巡りルートを探索したい。二人にとっては初めての九州。来訪して良かったと心から思ってもらいたい。だから、入念に準備したい。
 もう一つドメスチックな夏を過ごしたいと思っている理由がある。コロナ禍にかまけてここ何年か、田舎で満足のいく墓参りをしていないことがある。親父やお袋、長兄、次姉のお墓をじっくり拝みたい。毎朝、神棚に手を合わせてはいるが、時間があるなら、やはり田舎に戻ってそうすべきだろう。そろそろ実行しないといい加減罰が当たりそうだ。よし、決めた。台湾の旅は来年まで封印だ!
                  ◇
 賭け事から足を洗ってだいぶ経過した。パチンコにしろ、競馬にしろ、未練はない。麻雀は今もYouTubeで楽しんでいる。プロを名乗る雀士の対戦を傍観するだけで十分面白い。運の要素が大きい麻雀でプロを名乗るに値するか疑わしいとは思うが。聴牌を宣言するリーチがかかるたびにパソコンの画面上にリーチ(reach)という文字が走る。これにも違和感を禁じ得ない。リーチは漢字で書けば「立直」であり、中国語のピンイン表記だと lizhiであり、reachは無理があるだろう。そうしたい気持ちは分かる。日本人が普通にリーチと発声すれば、「到達する」のreach ではなく、おぞましい「ヒル」のleech になるからだ。
 競馬は今も暇さえあれば、パソコンで楽しんでいる。日本中央競馬会(JRA)のホームページにとべば、レースの実況が無料で楽しめる。予想を立ててレースを観戦するのは息抜きとして申し分ない。十中八九予想は外れる。外れても身銭を張っているのではないから、痛くも痒くもない。予想が当たると、俺の読みは当たっていたとほくそ笑む。かといって一銭の儲けもないが、こんな無益無害の娯楽もあっていいだろう。
 明日の日曜は競馬界が一番の盛り上がりを見せる競馬の祭典、日本ダービーの日。私も予想だけは立てて参加する。7906頭の3歳馬の頂点に立つべく17頭の駿馬が駆ける。ダービー馬の称号を手にするのは果たしてどの馬か?前売りだと2頭の馬が抜けた人気だ。うち1頭はただ1頭の牝馬。敏腕の外国人騎手が鞍上にあり、牝馬のハンデはなさそうだ。私が応援しているのはこれら2頭ではない。まあ勝つことは望み薄に見える。

人生いろいろ、記憶もいろいろ?

 定期的にオンラインで届いている米高級誌「ニューヨーカー」は、お気に入りのコラムニストの記事以外は目を通すことはあまりない。一本一本の記事が長くて、まともに読んでいればかなりの時間を割くことになる。
 “How to live forever” という見出しの記事を先週末に見つけた。「永久に生きる」ってどういうこと? そろそろ終活に入ってもおかしくない我が身としては興味津々、これは読もう。記事を印刷して読んだ。A4の紙で14枚程度。結構読み出のある量だ。この雑誌に30年以上勤務するベテランの男性ジャーナリストが筆者だった
 こういう食生活を心がければ、あるいはこういう運動を実践すれば、健康な長寿を手にすることが可能ですよとかといったものではなかった。それでも面白く読んだ。筆者は記録魔というか家族の例えば息子や娘の成長の跡がうかがえる日記(三日坊主で終わっていることがしばしば)や作文、親しい家族・親類間の手紙のやり取りなどをファイルして残している。友人との手紙やEmailのやり取りも捨てることはせず、特に興味深い一言が書かれているものなどはきちんと整理して、いつでもそれが取り出せるようにしているとか。
 “How to live forever” という主見出しに続く袖見出しは “The simplest, most foolproof way to extend life is to do so backward, by adding years in reverse.”(寿命を伸ばす最も簡単で誰にもできるやり方は過去を巻き戻すことにある。過ぎ去った歳月を付け加えていくことだ)。自分が生きて思ったこと、口にしたことを書き留めておけば、自分がどういう人生を生きてきたのかを明確に残せる、示せることができるのではないか、それが長生きにつながるという考え方だ。
 凡庸なる頭脳では分からないことは多いのだが、筆者の主張していることに賛同したい気がする。というのもつい最近、かつて全国紙の記者として八王子支局に勤務していた頃の後輩であるS君からメールが届いた。40年ぶりぐらいの「便り」だ。
 私は新聞社を早期退職して、アフリカの紀行本を書くために旅していた2010年、タンザニアという国で携帯電話を盗まれた。携帯には新聞社時代の先輩同僚後輩の電話番号が登録されており、連絡方法が途絶えた。その後、先輩同僚の中には他界された人もいて、東京本社から送られてくる社報でそうした方々の訃報を知る不義理の日々となった。だから、S君のメールは嬉しかった。
 話が横道に逸れたが、S君はメールに私との思い出を添えていた。おそらく40年前、とあるスナックで宴の後のカラオケに興じていて、H先輩から歌うことを求められたS君が歌うことを拒絶した。私は「S君、Hさんは皆と楽しくやりたいので、君にも歌うことを勧めているのだよ」と諭したとか。このエピソード、私は全然覚えていない。私にS君に歌うことを強いる権利などない。大きなお世話ではないか。きっと酔っていたのだろう。
 “How to live forever” を読んで、自分の言動を、例えば30歳の頃からでもいい、記録していれば、後年、それを読み返せば、人間としての成長の跡、いや、成長していないことが分かる証となるのではないか・・などと思った次第だ。S君によると八王子会の集いが企図されているとか。うーん、東京は遠い、遠く感じる地となってしまった。

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