- 2020-03-13 (Fri) 12:59
- 総合
ネットのニュースサイトはどこもかしこもコロナウイルスを報じている。世界は本当に世紀末の様相を呈しつつあるのか。このウイルスの致死率はそれほどでもないのに・・。人類をかつて恐怖に陥れたこの種の感染症としてよく引き合いに出される約百年前のスペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)では世界中で数千万が死亡したとか。ひょっとしたら、それに匹敵する規模のパンデミック(世界的大流行の感染症)となるのだろうか。そうだとしたなら、我々はまだ未曽有の疫病のとば口に立っているに過ぎないことになる。
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アカデミー賞を受賞して世界的に名を馳せた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」を観に天神の映画館に足を運んだ。今年は韓国人の友人と再会するつもりであり、その際、この映画が話題になることがあるやもしれない。
韓国語を独学している身には言葉の勉強になったことは言うまでもないが、正直、作品自体にはあまり感動は覚えなかった。韓国映画に対して以前から感じているが、殺人行為や流血シーンを日本のように「隠す」ことがないのは理解できる。この映画はそれほど生々しくは撮っていなかったものの、私にはそうしたシーンにあまり必然性はないように感じた。
「パラサイト」が告発していたのは、韓国の癒しがたい格差社会の現実だろう。貧富の格差は日本を含め世界中の国々が抱えている問題だが、なぜか韓国は日本から見ても信じられないほどの乖離があるようだ。それを如実に描いてはいた。救いのないエンディングも含め、また観たいと思う気にはならなかった。映画の中で印象に残ったのは登場人物の誰の発言だったか忘れたが、韓国で今、警備員の募集をすれば、大卒者が500人も殺到するという言葉だった。凄まじいほどの就職難ということだ。
話題の映画だけに混むかと思ったが、そうでもなかった。コロナウイルスで学校が休校措置になっているからか、中高生の女の子の姿が多かったように感じた。彼女たちは「パラサイト」のメッセージを理解できただろうか、と上映終了後にトイレに立ちながら思った。韓国を覆う高学歴社会、貧富の格差、若者の就職難などの背景を理解しておくことが大前提となる。エンターテインメントだけを求めて観に来たのならがっかりしたことだろう、きっと。
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映画館は閉鎖された空間。そこに2時間以上もじっとしているわけだから、さすがに鈍感な私もコロナウイルスのことを少し意識した。妹が来福した際にマスクを幾つか置いてくれていた。その一つをバッグに入れて映画館へ。上映室に入る前にそのマスクをした。マスクをするのは人生で初めてのこと。鼻も覆う必要ありとネットで読んだので、鼻まで覆ったが、メガネが曇って勝手が悪い。慣れないから息もしづらい。周囲を見ると、マスクをかけていない人もいたが、そのままマスクをして映画を観た。
押し入れには新聞社勤務時代に会社の保険組合から送られてきたマスクが箱の中に100枚ほど未開封の袋に入っている。少なくとも10年以上前のものだが、まだ使えるだろうか。開封する必要に迫られることなく、コロナウイルスが奇跡的に終息(中国語では结束)してくれることを切に祈る。