- 2019-04-25 (Thu) 23:40
- 総合
授業も残り少なくなった数日前、ごく簡単なヒアリングのテストがあった。老師(先生)が短文を読み上げる。さてその文章からどのようなことが読み取れるか?三つの選択肢から正答を選べという問題だ。繁体字で正確に記述するのは難儀なので、日本語で一問を簡略に紹介すると。<私の老師の姓は張です。夫人はフランス人です。彼らには女児が一人、男児が二人いて、それに波波という名の猫を飼っています。さて張老師の家は何人家族でしょうか? ①6人②4人③5人>。ペットの猫のくだりに惑わされてはならない。
上記のような問題が10個読み上げられた。私はおおよその内容は推察できたが、即座に正答を問われるとさすがに面食らってしまった。漢字の正確な書き取りでは苦労しているクラスメートたちは意外と正答を口にしていた。少なからずショックだった。英語のヒアリングならある程度の自信はある。なぜ中国語ではだめなのか? ホテルに戻って老師がくれたプリントアウトを改めて読み返すと、一読しただけで理解できた。ごく簡単な文章だ。だが、その程度のヒアリングでも私はほぼお手上げになってしまうのだから情けない。
先夜、クラスメートの2人と食事した。インドネシアから留学して来ている華人の子たちだ。安くて美味い食堂でランチを一緒した時に、そのうちに夕食をご馳走すると約束していた。ホテルの近くに手頃な日本食レストランがあったのでそこに案内した。3人で楽しく語らい合ったが、その時に「君たちはよくあの問題に難なく答えることができたね。僕には難しかったよ」と言うと、一人の子が「私が住む町はシンガポールのすぐそばにあって、中国語が身近です。両親も中国語を話せますし」と慰めてくれた。ああ、そうなのか。なるほど。
台北を歩いていて、中国語の広告や案内・告知などは比較的容易に理解できることが少なくない。少し想像力を逞しくすればほぼどれでも理解できると言いたいほどだ。しかし、耳にする言葉はまだまだ難しい。できるだけ多くの言葉を耳にして慣れるより他に手はなさそうだ。これまで大学で学生たちによく言ってきた “Practice makes perfect.”(習うより慣れよ)を実践するしかない。福岡に戻ってからも一層頑張ろう!
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台北に着いて以来、気になっていたことがあった。スーツケースを買い換えねばならないということ。英国をさるいた旅以来、押し入れにあったスーツケースの「寿命」がどうもきたような気がしていた。出国前にまず取っ手の一つが破損した。鍵の調子も悪くなり、簡単に開け閉めができなくなった。底部の車輪も油が切れたのかすさまじい音を立てる。周囲の人々が珍しい物でも見るように私を見やる。それに重い。ロンドン特派員の頃から使っているから30年近い代物だ。内戦も取材した「戦友」のような存在だが、致し方ない。
それで百貨店を中心にスーツケースを売っているお店を何軒かのぞいた。20,000と売り値が見える。お、これは手頃な価格だ。飛びつきたくなったが、よく考えたら、台湾ドル(元)の価格だ。日本円なら76,000円程度になる。今の私には手が出せない。最後に行き着いたお店で気にいったものがあった。今風のものだ。軽い。言葉がままならないなかでの交渉の末に4,850元(約18,400円)で決着。これなら私にも不満はない。軽くて収容キャパもある。重量超過で目が飛び出そうな罰金を支払わされることもなさそうだ。