- 2018-01-31 (Wed) 10:09
- 総合
日本語の新聞を読んでいて、私の場合は読売新聞が主だが、時に「消化不良」に陥ることがある。特に国際面のニュースだ。自分がかつてそうした職場で働いていたからだろうが、もう少し、伝えるべき内容と「格闘」して、良質の記事を読ませて欲しいと願うのだ。
最近ではニューヨーク発のグラミー賞の授賞式の記事がそれ。期待にたがわず、トランプ米大統領に異議申し立てする政治色の濃い式典となり、ヒラリー・クリントン元国務長官がトランプ政権の内幕を描いた暴露本を読み上げるビデオも上映されたとか。ヒラリー氏は「彼は長年、毒を盛られるのを心配している」などと読み上げ、会場からは大きな歓声が上がったという。
それはそれでいいのだが、なぜ大きな歓声が上がったのか、この記事だけではよく分からないかと思う。私は前日に英BBC放送のネットで彼女が実際に口にした文章を読んでいた。思わず笑ったが、まあ、これくらいのブラックユーモアは許されるだろう。ヒラリー氏は大統領がファーストフッド(fast food)を偏愛している理由について語っていたのだ。
“He had a longtime fear of being poisoned,” she said. “One reason why he liked to eat at McDonalds. No one knew he was coming and the food was safely pre-made.”
彼女の言葉を少し長めに翻訳すると、「トランプ大統領は長年、毒を盛られることに恐怖感を抱いている。彼がマクドナルドを好む理由もまさにそこにあり、このファーストフッド店であれば誰もまさか彼が来店するとは思わないし、第一、売られているハンバーガーは前もって作られているから、毒を盛られる心配がないのだ」とでもなるだろう。
新聞記事は常にスペースの問題を抱えている。いくら面白い記事でもニュースが立て込んでくれば、原稿は刈り込まれていく。それでも、記事のみその部分は最後まで残す必要がある。スペースに限りがあれば、他の部分を削ぎ落としてみそは絶対に残す。上記の国際面の記事では削ぎ落とせる箇所はたっぷりあるように見受けられた。残念!
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もう一つ、読売新聞から。10年ぶりに全面改訂された岩波書店の辞典「広辞苑第七版」に、九州に馴染み深い言葉が収録されたとか。「はなれたり集まったりすること」を意味する「離合」だ。「列車や自動車がいきちがうこと」という説明が新たに加わったという。
「離合」という語はとても使い勝手がいいと思う。狭いトンネルや林道の多い九州の山間部をドライブしていると、対向車がとても気になる。乗用車同士だったらまだしも、向こうが大型トラックだったりすると、「あ、あれでは離合できない!」と慌てたりする。九州(福岡)に転勤し、九州各県の山間部を取材のためレンタカーで走っていた時、大型トラックとの離合がなかなかできず、冷や汗をかいたことが幾度かある。
だから私は「離合」は標準語だとずっと思っていた。とある温泉で入浴客が「九州(宮崎)では車がすれ違うことができることを離合って呼んでますね。面白い表現ですね」と話しているのを聞いて、初めて地域限定の語だと知った。この意味での「離合」は英語ではおそらく、pass each other か。As the road was wide, the two cars could pass each other.(道幅が広かったので、二台の車は離合できた=行き違うことができた)
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