- 2017-11-27 (Mon) 12:00
- 総合
お世話になっている出版社・書肆侃侃房に立ち寄ったら、出版ほやほやの新刊を頂いた。韓国の女性作家の『七年の夜』という小説だ。もちろん、日本語翻訳本。550頁もある厚手の本だけに暇な折にゆっくり読み進めようと思っていたら、先が気になり、わずか数日で読み終えてしまった。こういう本を英語では a page turner と呼ぶようだ。頁をどんどんめくりたく(turn)なるような「面白い本」を意味する。
著者は韓国全羅南道生まれのチョン・ユジョン(丁柚井)氏。帯のPR文には「いま韓国でもっとも新作が待たれる作家チョン・ユジョン待望の長編ミステリー」とある。二組の夫婦、それぞれの一人息子、一人娘を核として、誰しも遭遇することを願わない、いや心から忌避したい、殺人事件の加害者・被害者、という状況で出会わざるを得なかった彼らが繰り広げる愛憎の物語で、実に丹念に伏線がはられたスリル満点の作品だった。独身の身としては父親と息子、娘の濃密な関係を羨望、また憤怒を覚えながら読んだ。
翻訳も優れていた。書肆侃侃房は韓国の女性作家による作品を精力的に翻訳紹介している。日韓の文学的なやり取りでは明らかに我々日本の方がより多くのものを送り出しているのだろう。そうした「不均衡状態」を是正する貴重な取り組みと言える。『七年の夜』については以下のサイト(http://www.kankanbou.com/kankan/index.php?itemid=839)へ。
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南部アフリカのジンバブエで新大統領が就任した。英語のスペリングを見ると、難しそうな名前だ。ムナンガグワ大統領。失脚した前大統領のムガベ氏の忠実な僕(しもべ)だった人物で、敵対する部族の虐殺に直接加担した過去も抱えており、彼が果たして今口にしている国民融和の政治を実現することができるか前途多難。
新大統領は国民から総スカン状態の前任者一家の安全を保障したようだが、国民がずっと黙っているか分からない。ムガベ独裁体制は南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)時代のようにきちんと「清算」すべきだろう。私はムガベ氏の転落は亡きマンデラ氏への嫉妬が招いたと思っている。マンデラ氏が1990年に解放された後、世界の耳目をその一身に集めるようになって以来、ムガベ氏はアフリカの代表的指導者の座から片隅に追いやられてしまった。マンデラ氏同様、ノーベル平和賞を受賞した南アのデズモンド・ツツ元大主教も過去にムガベ氏のマンデラ氏への嫉妬心を指摘していたことを覚えている。
私はナイロビ支局に勤務していた頃、南ア取材で何度もジンバブエを訪れたが、ムガベ氏に直接の取材経験はない。27日のジャパン・ニュース紙はムガベ氏が独立闘争の闘士から政治家に転身する頃から氏を身近に見てきた英紙の元記者のコラムを転載していた。次の一節がムガベ氏がマンデラ氏とは似ても似つかなかった人物だったことを物語っている。
I have no doubt that he is motivated solely by a deep-seated determination of political power, irrespective of the cost to others. It is enhanced by an innate cruelty. (ムガベ氏の行動は自分の心の奥深くに根差した政治的権力を奪取する思いにのみ基づいていたことに疑いの余地はない。それが他者にどのような災いをもたらそうともだ。彼が秘めていた生来の残酷さがそうした思いを一層あおったことも)
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