- 2017-10-20 (Fri) 08:57
- 総合
あまり野球のことばかり書きたくないのだが、いいゲームを見せられると、これは致し方ない(かと思う)。木曜早朝(日本時間)の大リーグ、アメリカンリーグのプレーオフ優勝決定戦第5戦がそうだった。先発の田中マー君は7回を3安打8三振無失点の力投を演じ、ニューヨークヤンキースを勝利に導いた。これでヒューストンアストロズとの対戦成績を3勝2敗として、ワールドシリーズへの進出にあと1勝にこぎつけた。
マー君は今年一年、特に前半戦ではピリッとしない投球が続き、辛口のヤンキースファンから猛バッシングを受けていた。私はケーブルテレビの生放送で彼のピッチングを見ていて、これではこき下ろされても仕方ないと思っていた。終盤にきてやや持ち直していたが、プレーオフに入って俄然、彼の秘めたる力を発揮した。特に木曜のゲームは出色だった。
大リーグのホームページに掲載されている試合後の戦評をざっと読めば、彼のパフォーマンスが味方の選手たちにどう映っていたかよく分かる。トッド・フレイジャー選手(三塁手)は次のように語っている。"He was just dominant. He does all this crazy stuff and then the ball just disappears on batters. I couldn't be more happy for him. He's a great guy, on and off the field. What a performance. Just gutsy. Big time win for him."(彼は圧倒的だった。何しろ投げる球が打者の前で突然消えるんだから信じられないだろ。彼のためにもこれ以上喜ばしいことはない。凄い男だよ。グランドの中でも外でも。何というピッチングだ、気迫だ。彼にとってもとても大きい一勝だった)
この戦評の書き手は次のように記している。The normally stoic Tanaka didn't bother to contain his excitement, screaming and pumping his fist before jogging to the first-base line. In all facets, this is no time for holding back.(いつもはストイックなタナカはこの日は興奮を隠そうとしなかった。マウンドで声を上げ、ガッツポーズをして、ベンチに引き上げた。プレーオフの時期に至ると、感情を抑えるようなときではないのだ)
私もまさに同感だ。シーズン中にヤンキースのベンチの様子が時々テレビで映しだされたが、マー君は仲間と談笑しているシーンはほとんどなかった。関係は良好なのだろうが、やはり苦手の英語がハンデとなっているのだろう。それだからこそ、彼がプレーオフで見せた気迫のあるプレーは仲間の評価を上げ、絆を強める。
ところで、大リーグのホームページを閲覧すると、英語の勉強にもなる。例えば、この日のマー君の快投を紹介した記事の一つの見出しは、Masa-zero! Yanks blank Astros, lead ALCS 3-2 となっていた。田中投手のファーストネームである将大(Masahiro)と、彼が7回を零封したことをひっかけた文言だ。この見出しを実際に口にしてみると、書き手のユーモアが伝わってくる。
ヤンキースがこのままワールドシリーズに勝ち進み、ナショナルリーグの覇者となる可能性大のロサンゼルスドジャースと対戦することになってくれれば、マー君とダルビッシュ有、前田健太両投手が投げ合うシーンが見られるかもしれない。日本人投手同士の対戦となれば、英語のネイティブにしかものにできない、さらに一ひねりした見出しが見られるかもしれない。それも楽しみだ。学生たちに授業で紹介できる傑作を期待したい。
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