- 2017-05-21 (Sun) 21:25
- 総合
トランプ米大統領が型破りの為政者であることは海の向こうから送られてくる連日の報道でよく分かる。最近の英字紙の紙面で目にしたのは、匿名で報じられた政権関係者のトランプ大統領評。“He has no filter; it’s in one ear and out the mouth.” というものだった。「大統領はフィルターを持ち合わせていない。耳にした情報はすぐに口から出ていく」という感じか。「大統領は超口軽!」と揶揄りたくさえなる。
トランプ大統領が渦中にあるロシア疑惑を巡って、独立性の高い特別検察官が任命される事態に至った。この暗雲が政権の今後にどういう影を落すことになるのか予断を許さない。それはそれとして、彼がこれまでの為政者と決定的に異なるのは、上記の皮肉(批判)が物語っているように、「放言癖」と紙一重の「歯に衣着せぬ」発言だ。私はそうした発言が報じられる度に“loose cannon”(何を言い出すか分からない人)という表現が頭に浮かんでいる。英英辞典にはこの表現は “a person, usually a public figure, who often behaves in a way that nobody can predict” と載っている。
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今年2月初めに、中国語の学習での気づきについて次のような趣旨のことを書いた。———最近気になったのは次の文章。我嗓子疼。<私は喉が痛い>。嗓子は喉を意味する。疼は<痛い>。声調を無視してカタカナ表記すると、<ウォサンズトゥン>。英語にそのまま落とすと、I throat sore. となる。自然な英文にすると、I have a sore throat. とか My throat hurts. といった文章になるかと思う。英語では上記の文章でI の直後にthroat と続けることは無理がある。中国語は自然に続けることができる。日本語は係助詞があるので、<私は喉が>と言えば、何の差し障りもなく自然な文章となる。この点だけを見れば、日本語を母国語とする我々は中国語により容易に近づくことができると感じる。————
『日本語の謎を解く 最新言語学Q&A』(橋本陽介著)という昨年刊行されたばかりの本を読んでいて、次のような記述に出くわした。———私自身は、「象は鼻が長い」「私は足が痛い」の「象は」や「私は」は「主題」であって、「鼻が」「足が」が主語だと説明するのがいいと思っています。専門家の間では、「主題」は語用論の概念であり、文のレベルで使用するのは適切ではないという意見も多いのですが、私は語用論と統語論と区別しない立場であり、また「は」の実際の機能を考えるならば、「主題」という概念を文レベルでも認めるべきだと思っています。(中略)二重主語文や主語の省略は中国語や朝鮮語にも存在します。例えば「私は足が痛い」は中国語では「我(私は)脚(足が)疼(痛い)」となるように、日本語をそのまま直訳することができます。より文法的に近い関係にある朝鮮語は言うまでもありません。————
橋本氏は中国語を中心とした文体論が専門で、ほぼ独学で7か国語を習得した異才の人物とか。その橋本氏によると、日本語は欧米の言語とは異なり、「主題卓越型の言語」と呼ばれているのだという。確か、中国語もそういう特徴があるとどこかで読んだ記憶がある。こうした指摘に触れると、日本人として中国語を学習する意欲を大いにそそられる。初学者の私が気づいていない日本語、中国語の類似性はまだ多々あるのだろう。楽しみだ。
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