- 2016-04-06 (Wed) 22:50
- 総合
好きな英語の語にserendipity というのがある。広辞苑には「セレンディピティー:思わぬものを偶然に発見する能力。幸運を招きよせる力」として紹介されている。テレビのCMでも耳にした記憶があるが、外来語として定着するのはまだ先の話だろう。
会社を早期退社して海外を旅した際、多くの貴重な出会いに恵まれたのも、この「セレンディピティー」のお蔭と思っている。たいした取り得のない私にとっては「犬も歩けば棒に当たる」程度の力だが、それでも神様には感謝している。カムサハムニダだ。
さて、二度目の釜山訪問。前回の旅で少し慣れた(と思っていた)ので、フェリー港から路線バスに乗った。適当なところで下車した。すっかり気に入った賑やかなジャガルチ市場に近いと思って歩いていたら、どうも勝手が違う。道行く人に尋ねても要領を得ない。若い女性に声をかけたら、彼女はスマートフォンを取り出し、私が全然場違いの地区を歩いていることを納得させてくれた上で、地下鉄の駅まで連れて行ってくれた。カムサハムニダ。
一夜明け、釜山大学に地下鉄で向かう。アポもないし、あてもない。とにかくキャンパスで誰かつかまえて話をしたい。唯一の頼りはserendipity だ。英語の苦手の学生が多いのは日本と同様か。それでも、何とか英語を解してくれる女子学生二人に遭遇。彼女たちは英語専攻科のある教育学部に案内しましょうと言ってくれた。釜山大学のキャンパスは丘の上にあり、坂を上って歩くことしばし。教育学部で別れたが、その間、英語でできるだけの会話を交わした。可愛くて親切な学生たちだった。
教育学部の事務室でこちらの希望を伝え、さあて、これからどこに行こうかと思案しながら、キャンパスを下っていると、カフェが見えた。足を向けると、前を歩く一人の女子学生がいた。「このカフェではパソコンでネットできますか?」と背後から尋ねる。学生は「できるはずですよ」と答えた。席に就き、パソコンを立ち上げたが、WiFiにアクセスできない。よくあることだと諦めようとしていたら、先ほどの学生がそばに立ち、「だめですか。私のIDを使ったらアクセスできますよ」と親切に操作してくれた。嗚呼、カムサハムニダ。
彼女はこの日出会った中で一番英語が上手だ。少しおしゃべりができないかな。23歳のHさん。卒業したばかりだが、就職難もあってまだ大学に籍を置いているとか。
私「英語がお上手ですね。どうやって英語を勉強しましたか?」
Hさん「いいえ、まだまだです。ただ、在学中にカナダに留学した経験があり、そこで英語を鍛えられました。私の世代は小学校の頃から英語を学んでいますが、文法中心だったので、実務的な力は駄目です。英語を聞いて話せる人は概ね留学経験者だと思います」
私「それは日本でもよく耳にする批判です。かねてから実務的な英語の力を育成する必要性が声高に叫ばれているんですよ」
Hさん「カナダの留学先で出会った日本人の学生たちを知っているので、それはよく分かります。韓国では今は小学校の早い段階から英語を勉強しています。彼らは私たちの世代よりずっと英語の力をつけるようになるでしょう」
いい機会に恵まれた。韓国語の独学を始めて以来、ずっと引っかかっていた疑問点をHさんに教えてもらおう。
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