- 2024-04-21 (Sun) 08:37
- 総合
最後の項をアップしてから二週間以上経過している。水はやはり高きところから低きところに流れるようだ。ものぐさになってくるとどこまでも怠けたくなる。ただ、今回の「筆無精」はちゃんと理由がある。公立中学校での従来の非常勤講師の仕事に加え、今月から公立高校での仕事も一つ引き受けた。高校の教壇に立つのもこれが初めて。教科書や副読本など授業で活用する教材を読み込む必要のほか、かつて大学の講義で使っていたパワーポイントの準備など、準備作業が格段に増えた。
そういう事情もあり、パソコンに向かい、ブログをアップするのが億劫になっていた次第だ。鹿児島から帰福して以来、そう書きたいこともなかった。いや本当はあったのだが、そのうちにと思っているうちに意欲と記憶が失せてしまった。
本日は土曜日。このところ一気に春めいてきて、木曜日にはガスヒーターを片付けた。気分も晴れやかになるかと期待していたら、今日は雨模様。寒くはないが、爽やかな面持ちからはほど遠い。来週の授業の準備が一段落したら軽く一杯やろうと考えていたが、夕刻までに気分が持ち直すものか・・・。
地元のラジオ放送を聴いていたら、2024年の本屋大賞を受賞した作品のことを激賞していた。そういう文学賞があることは知っていたが、芥川賞とか直木賞とかと異なり、わざわざ書店に足を運び、受賞作品を買い求め読んだことはなかった。今回もそこまでの興味関心はなかった。なかったのだが、通勤の帰途、駅の中にある書店に立ち寄ったら、店頭に本屋大賞の作品が並べられていた。目立つ表紙なので手に取って見る。『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈著・新潮社)。ふと手に取りたくなるような装丁の本だ。
主人公は成瀬ひかりという中学二年生の女子。滋賀県大津市の琵琶湖の近くに住む。小学校の卒業文集に「二百歳まで生きること」が夢と書くようなユニークな子だ。オムニバスの六つ目の短篇が終わる頃には大学進学を目前に控えた高校三年生になっているが、高校入学時には頭を坊主にして登校する。世に言われているように、人間の髪の毛は本当に1年で1㌢伸びるのかを自らの頭で卒業式までに見極めたいのだという。この説が本当なら、卒業時には自分の髪の毛は36㌢までになっているはずだと。
成瀬ひかり嬢はこのように風変わりな子、世間の常識的なことには無頓着だが、決して傲慢ではない。小学校以来成績は優秀。他の女の子と群れることもなく、いじめの対象ともなるが、あまり気にもしていないようでもある。こういう子だから親友と言える友人がいるのか疑わしくなるが、同じマンションに島崎みゆきという同級生が住んでいて、こちらはごく普通の女の子。島崎嬢は及び腰ながら、なぜか大胆不敵な成瀬嬢の行動に付き合っていく。
私は著者の宮島未奈氏のことは何も知らない。奥付には1983年生まれ、京都大学文学部卒業、大津市在住とある。メディアの書評も読んでいない。ネットでぐぐってもいない。きっと好意的な書評が並んでいるのではないかと推察する。私にとって大事なことは久しぶりに楽しく小説を読んだという思いだ。宮島氏のこのデビュー作は肩の凝らない文章で、短時間で読み終えることができた。物語の筋から見て、きっとこれからも奇想天外かつ爽やかな続編が次々に生まれていくのだろう。