- 2021-05-29 (Sat) 08:44
- 総合
パソコンのメルアドには連日、購読契約した米ニューヨーカー誌からニュースレターが届いている。コロナ禍で気分が塞ぐこともあって、最近は素通りすることが多い。ただし、ベテランジャーナリストのスーザン・グラッサー氏のコラムだけはできるだけ目を通すようにしている。このブログでも何回か言及したことがある記者だ。
週末に送られてきたコラムには以下の見出しがついていた。“American Democracy isn’t dead yet. But it’s getting there” (アメリカの民主主義はまだ死んではいないが、死に体になりつつある)。見出しからして気の滅入りそうな記事だが、読んでみた。
トランプ政権を打倒した民主党のバイデン政権。コロナ対策では確実に成果を上げつつある。しかし、共和党の子供じみた抵抗にあい、超党派の施策は極めて困難な状況が続いている。今年1月6日に首都ワシントンで起きたあの米議会暴動事件の真相究明もトランプ氏に忠誠を誓う共和党議員の反対で頓挫しそうだという。
驚くのは、共和党支持者の多くは今なお、昨年の大統領選で勝利したのはトランプ氏だと信じており、3分の1の支持者はバイデン政権を崩壊させるためには武力行使を是認するという指摘だ。トランプ氏自身がメディアでいまだに自分が本当の大統領であると吹聴し、それが許されている現実は到底、世界がお手本としたい民主国家とは言えない。
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オンラインで続けている「名作を読む英語教室」。受講生は少ないが、私にとっても勉強になっており、やりがいのある講座だ。月2回の開講で最近のプリントアウトを見ると第45回と記載されている。ということは2年近く継続していることになる。
翻訳の課題を出し、講評も手がけているので、これまでは英米の短篇小説を中心に読んできていた。コロナ禍でオンラインの教室となって以降はネットで読むことができる古典的な作品を選んでいたが、最近の作品も読んでみたいと考えるようになった。ふと頭に浮かんだのは好きな作家の一人、カズオ・イシグロ氏が近未来の社会を描いた近作、“Klara and the Sun”。それほどの長編でなかったら教室の題材となるのではないかと思った。
洋書を扱っている天神の書店に電話を入れて確認する。300頁ほどの長さだと知った。肝心なのは価格。税込みで2255円。決めた。これなら最初の月の受講料を半額(以下)にすれば、受講生に余計な負担はかけずに済む。7月から “Klara and the Sun” を読もう!
私は幸い、新聞の読書欄などに出ていたこの作品(邦題『クララとお日さま』)の書評は読んでいないので、内容に関しては何の知識も持たず、虚心坦懐に本に向かうことができた。面白かった。英文も分かりやすかった。2005年の “Never Let Me Go” (邦題『わたしを離さないで』)と似た読後感を抱く読者も多いのではないか。大団円のところでは素朴な疑問も生じたが、それをここで書くのは控えたい。教室の受講生に「書評欄などは一切読まずに真っ白な気持ちで読んでください。読み進めるうちに葉っぱや木々がやがて森が見えますから」と説いていた。受講生がひょっとしてこのブログを読む可能性もある。今詳述すると、この本を読む楽しさを奪うことになる。教室で読破するのはおそらく秋頃か。その頃に私の読後感をこのブログできちんと記したいと思う。
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