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オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)④

  • 2012-09-07 (Fri) 08:09
  • 総合

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 先に書いたアイルランド出身の作家を紹介したダブリン市内の記念館のワイルドのコーナーでは、次のような文章が掲示されていた。
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 Unlike his fellow-countrymen, Wilde never took Ireland as his subject and for that reason is usually classed as an English writer. As Yeats noted, however, it was Wilde’s Irishness witch made English society a foreign country to him; he introduced himself to it as a subversive element and a rebel against its conventions.(同胞たちと異なり、ワイルドはアイルランドを作品のテーマとして取り上げることはなかった。このため、彼は通常、イングランドの作家として扱われている。しかしながら、イェイツが指摘したように、ワイルドはアイルランドの特質を身に付けていたからこそ、イングランドの社会は彼にとって異国になったのであり、彼はイングランドの社会をかく乱し、イングランドの慣習に異を唱える存在となったのだ)
 アイルランドの若者はワイルドの作品をどう評価しているのだろうか。ダブリンにあるアイルランド最古の名門大学、トリニティカレッジ(TCD)のキャンパスを訪れた。ワイルドがオックスフォード大に進む前に学んだ大学でもある。
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 TCDで文学を教え、ワイルド作品に詳しいジャラース・キリーン准教授に話を聞いた。
「今の学生はワイルドをどう見ているのでしょうか?」
「講義でワイルドの作品を取り上げると好評です。“The Picture of Dorian Gray” とか “The Importance of Being Earnest” が人気です。他の作品はそうでもありません。学生たちはワイルドのウィティシズム(機知)だけでなく、セレブな面に惹かれているとも言えます。彼がどういう作品を書いたかというよりも、彼が一世を風靡する話題の人物であったという側面です」 
 「彼はアイルランドの作家として見なされているのでしょうか?」
 「近年はそうです。以前は英国の作家と見られていました。彼がアイルランドを取り上げた作品はありませんので」
 「W.B.イェイツはワイルドのアイリッシュネス(アイルランド人としての特質)を指摘していますね」
 「ワイルドはダブリンのカトリック教の家庭に生まれました。母親はアイルランドの独立を求める筋金入りのナショナリストでした。ワイルド自身はTCDの後、オックスフォードに進み、すぐにアイリッシュなまりの英語ではなく、イングランド人のように英語を話すようになります。彼の人生は同性愛志向を含め、常に二重性をはらんでいました。ただ同性愛志向はビクトリア時代のイングランドでは珍しいことではありませんでした。ワイルドが他と異なったのは、我々には理解し難いことなのですが、最後の局面で自分の同性愛をあたかも正当化するように振る舞ったことです。クィンズベリー侯爵を相手取った信じ難い告訴に出たのはまさにそうとしか考えられません」
 (写真は上から、ワイルドも学んだダブリンの名門大、トリニティカレッジのキャンパス。ここも北米を含めた観光客で賑わっていた。キリーン准教授。今関心を抱いているのは『ドラキュラ』で知られるアイルランド人作家のブラム・ストーカーだと語っていた)

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