- 2012-05-24 (Thu) 06:21
- 総合
ホームズは文学や哲学、天文学などについては暗かった。これに対して、化学、解剖学、地質学などの分野には明るく、専門的な知識を有していた。ワトソンはホームズが一体何の仕事をしているのかいぶかる。そして彼自身の口から彼が探偵業の仕事で糊口を凌いでいることを知る。
ホームズ曰く “I suppose I am the only one in the world. I’m a consulting detective, if you can understand what that is. Here in London we have lots of Government detectives and lots of private ones. When these fellows are at fault they come to me, and I manage to put them on the right scent.”(私のような仕事をしている者は世界で二人といないかと思う。私は探偵のコンサルタント業をしている。私の意味しているところが分かってもらえるだろうか。ここロンドンにはお役所に属している探偵が沢山いるし、民間で探偵業を営んでいるのも大勢いる。彼らが難問に直面した時に私のところにやって来るのだ。私は彼らの相談を受けて、問題解決につながる手がかりを見つけ出してやっているのだよ)
さて、物語はロンドンで発生した不思議な連続殺人事件を巡って展開する。ある夜、空き家になっていた住居でアメリカ人の男性旅行者が不審死しているのが見つかる。その直後、彼の連れの男性秘書もホテルの一室で殺されているのが見つかる。
ホームズはロンドン警視庁の刑事からいつものように支援要請を受け、現場に駆けつけ、残されていた足跡や結婚指輪などを手掛かりにこの難解な事件の解明に当たる。事件の背景には19世紀のアメリカ・ユタ州で隆盛となったモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)の「暗部」が描かれていて、引き込まれて読んだ。
事件解決の有力な物証、証言を得たホームズは皆目見当がつかないワトソンに語りかける。書名の由来が出てくる場面だ。“…; a study in scarlet, eh? Why shouldn’t we use a little art jargon. There’s the scarlet thread of murder running through the colourless skein of life, and our duty is to unravel it, and isolate it, and expose every inch of it….”(「緋色を調べるのだよ。芸術用語を使わせてもらえればだ。一見無色の人生という名の織物をよく見れば、殺しの緋色の糸が絡んでいることもある。我々の責務はもつれた糸をほどき、仕分け、織られているあらゆる糸を明るみに出すことだ」)
犯人に目星を付けたホームズはロンドン警視庁の刑事に向かい、この事件に関してはこれ以上の殺しは起きないこと、自分には犯人が誰であるか分かっていること、間もなく犯人を捕らえて見せることなどを明らかにする。だが、逮捕の危機が迫っていることを犯人に気づかれたなら、彼を捕まえることは難しいことも。 “..; but if he had the slightest suspicion, he would change his name, and vanish in an instant among the four million inhabitants of this great city….” 。19世紀末にロンドンの人口はこの時すでに400万人の大都会であったことがここからうかがえる。
(写真は、シャーロック・ホームズ博物館を出ると、すぐ近くにあるのが広大なリージェント・パーク。多くの人たちがのんびり癒しの時を過ごしていた。動物園もある)