- 2012-07-16 (Mon) 01:20
- 総合
イングランド南部の旅をひとまず終え、ロンドンに戻った、と書きたいところだが、オリンピックを控えて、ロンドン周辺のホテルやゲストハウス(B&B)の値段が跳ね上がっていそうなので、北に向かい、ケンブリッジに来ている。
「来てしまった」というのが正直なところだ。ずっと昔に一度だけ訪ねたことがあり、ロンドンからそう遠くない印象があったのだが、思ったほど近くはなかった。特急列車に乗ればロンドンから50分足らずの距離だから、東京なら八王子のような「感覚」だが、往復切符が約20ポンド(約2800円)。毎日この列車代でロンドンに向かう気にはなれない。
ロンドン周辺のホテルは極端なケースだと、比較的安い一泊90ポンドのホテルでも、オリンピック期間前後は2倍になるとかの話も耳にしていた。私が到着以来、常宿にしていたロンドン郊外の町、ヘイズ(Hays)にあるゲストハウス(一泊45ポンド)では、愛想のそう良くない経営者のマダムが「オリンピックが近づいたら、宿代上げるよ。いくらにするかはこれから考える。値段が上がるのはうちだけではないから、あんたはその間、田舎でも旅していた方が得策ってもんだ」といった感じのことをのたまっていた。
そんなわけでネットで安宿を検索していて、ケンブリッジまで「来てしまった」。まあ、毎日ロンドンに行くわけでもないし、読まなくてはならない本もあるから少しの間、ここを「足場」としよう。そう思っていたら、近く書く予定の作家がここケンブリッジに深い縁のあることを知った。「これもProvidence(神のお導き)かも」と考え始めている。
第一、ケンブリッジと言えば、オックスフォードと並ぶイングランド屈指の文教の都市だ。ヴァージニア・ウルフの項で紹介したボヘミアン的雰囲気の知的集団「ブルームズベリー・グループ」もケンブリッジ大学の卒業生が中核だった。
振り返って、イングランド南部の旅はこれまでほとんど接したことのない英国の姿を見ることができて実りあるものだった。誤解を恐れずに書けば、イングランド南部は圧倒的に白人のイングリッシュの人たちが住む地域だった。黒人やアジア系、北アフリカ系の人たちを見かけることは稀だった。ロンドンやその周辺と大きく異なる点だ。例えば、ヘイズでは町を歩けば、大多数の住民は黒人やインドを中心としてアジア系、北アフリカ系のいわゆる「マイノリティー」(社会的少数派)の人々だ。同じ国とは思えないほど目にする光景が異なっている。
ヘイズではそうした多様なイングランド人、あるいはその一歩手前の移民の人たちが一見「穏やか」に暮らしている。微妙な「住み分け」がなされているのかもしれない。当然のことながら、人種間の確執・軋轢はあるだろう。しかし、英国がヨーロッパ大陸の国々に比べれば、途上国からの移民への排斥の動きがそう激しくない国であることも事実だ。それは極右の政党がこの国で台頭していないことを見ても理解できる。もちろん、表面の穏やかさの下に危険な「マグマ」は潜んでいるのだろう。私はまだ今回の旅ではそうした「マグマ」にはまだ接していないが。
(写真は上から、オリンピックが近づき、一段と活気付いた感のあるロンドンのビクトリアステーション。ケンブリッジ中心部の公園。ケンブリッジの観光名所、ケンブリッジ大学のキングズカレッジのチャペル正門)
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Comments:2
- Taka Asai 2012-07-16 (Mon) 10:27
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省一さん、やはり“オリンピック料金”は事実のようですね。ぼくはオリンピック期間の後半、あるグループの観戦ツアーに参加する予定ですが、ツーリストが提案してきたロンドン市内の4☆クラスのホテルで1泊1人47,000円。これじゃとてもと交渉を重ねた結果、郊外の3☆クラス(同22,000円)で手を打ちました。これも普段の倍の値段とか。期間中は閑静な大学都市で読書三昧こそ正解だと思います。引き続き“さるく”を、徳島トーストマスターズクラブ一同、楽しみにしています。
- 那須 2012-07-16 (Mon) 16:38
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Asaiさん そうですか。やはり、それぐらいしますか。期間が限定されていると、致し方ないですね。あまり遠くに泊まると、時間がもったいないですしね。イングランドは昨今どこに行っても雨、小雨に見舞われています。そのうち好転するかもしれませんが。ツアーには携帯の傘か携帯の合羽を持参することをお勧めします。徳島トーストマスターズクラブの方々にも読んでいただいていることうれしく思います。