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ダニエル・デフォー(Daniel Defoe) ③

  • 2012-05-30 (Wed) 05:58
  • 総合

 主人公が流れ着いたのは無人島ではあるが、絶海の孤島ではなかった。時に、近くの島々に住む人食い人種の蛮人が到来していた。戦いで捕虜にした敵対する部族の人間をこの無人島に連行して殺害、その人肉を焼いて、貪り食っているのだ。
 主人公は恐怖に怯える。と同時に、蛮人を殺害することには抵抗を覚える。この辺りは読んでいて共感した部分だ。彼は考える。蛮人が同じ人間を食べることは理解できないし、許されざる行為として激しい怒りを感じるものの、それは彼らの風習であり、自分に現時点では危害を加えていない彼らを私は何の権利があって殺害するのであろうか。それでは自分も「殺人鬼」となるのではないか。しかし、彼らに見つかれば、自分が殺され、食われるのは必定であり、彼らを殺害することは自己防衛(self-preservation)に過ぎない。さらに、彼らが食おうとしている捕虜を助け、味方とすることで無人島生活からの脱却につながる可能性が見つかるかもしれない。このような心境に至った主人公は人食い人種と次に遭遇したならば、彼らと敢然と戦うことを決意する。
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 無人島に住むようになって27年の歳月が流れた。この間、人食い人種の男たちに食われる寸前だった蛮人の男やスペイン人の船乗りたちを助け出し、島の人口は主人公を含め4人に増えた。そうした折、イギリス人が乗り込んだ船が船員の反乱で無人島の沖合まで漂着。主人公は生命の危機にあった船長ら3人を助け出し、船員の反乱を収拾させたことで、無人島から脱却する絶好の機会に巡り合う。窮地を救ってくれたことに感謝する船長に向かい、彼は神が自分たちにこういう機会を与えてくださったのだと語る。
 I told him I looked upon him as a man sent by Heaven to deliver me, and that the whole transaction seemed to be a chain of wonders; that such things as these were the testimonies we had of a secret hand of Providence governing the world, and an evidence that the eye of an infinite Power could search into the remotest corner of the world, and send help to the miserable whenever He pleased. I forgot not to lift up my heart in thankfulness to Heaven; and what heart could forbear to bless Him, who had not only in a miraculous manner provided for me in such a wilderness, and in such a desolate condition, but from whom every deliverance must always be acknowledged to proceed.(私は船長に言った。あなたは神が私を救い出すために送ってくれた人間であると思うと。船が到来して以来の一連の経過は驚きの連続であり、それはまた神がこの世を統治していること、神の無限の力は世界の果ての果てまで及んでおり、神がそう望めば、悲惨な境地にある者にいつでも助けの手を差し伸べることができることを証明するものだとも。私は同時に神に感謝することも怠らなかった。時ここに至って、神を賛美することを控えることができる者など誰がいようか。神はこのような荒れ地で、しかも絶望的な状況下で私を奇跡的に生き長らえさせ、そして今、私がこの島から抜け出す機会を与えて下さろうとしているのだ)
 (写真は、大英博物館は昔も今もいつ行っても観光客でいつもの賑わい)

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