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ダニエル・デフォー(Daniel Defoe) ②

  • 2012-05-29 (Tue) 07:23
  • 総合

 ロビンソンは結局流れ着いた南米のブラジルで農園経営に乗り出し、成功を収める。そして当時盛んになりつつあった奴隷貿易に目をつけ、自らアフリカに奴隷を買い付けに行くことを企図する。だが、航海の途中、嵐に遭い、自分一人だけ命は助かったものの、無人島に流される。小説では1659年、主人公が27歳の時とされている。
 北米に目を転じれば、英国からアメリカに向け、新天地を求める人々の移住が進み始めていた時代だ。それとともに、新天地で綿花やタバコを栽培する強健な労働力としてアフリカの黒人が奴隷貿易の餌食となっていった。ロビンソンも奴隷貿易に参画して富を蓄えることに良心の呵責は何ら覚えない。
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 無人島での生活を余儀なくされて、彼は初期のころは次のような思いに至る。
 Upon the whole, here was an undoubted testimony that there was scarce any condition in the world so miserable but there was something negative or something positive to be thankful for in it; and let this stand as a direction from the experience of the most miserable of all conditions in this world: that we may always find in it something to comfort ourselves from, and to set, in the description of good and evil, on the credit side of the account. (全体から見て、私が経験していることはこの世の中に悲惨極まりないという状況などめったにあるものではないということの紛れもない証明だ。そうした悲惨な状況であっても、否定的なものだけでなく、感謝すべき何かしら肯定的なものがあるものだ。このことを、私がこの世で最も悲惨な状況を味わった経験を通して得た教訓として生かして欲しい。どのような状況の中でも何かしら慰められるものが見出されるものであり、物事の善と悪で言えば、善として見なされるべきものだ)
 だが、無人島での寂しい生活、不便この上ない生活が長引くにつれ、彼の気持ちは当然のことながら折れそうになる。そうした主人公を支えるのはそれまでは意識することのなかった信仰だ。聖書及びキリスト教の信仰だ。
 These reflections made me very sensible of the goodness of Providence to me, and very thankful for my present condition, with all its hardships and misfortunes; and this part also I cannot but recommend to the reflection of those who are apt, in their misery, to say, “Is any affliction like mine?” Let them consider how much worse the cases of some people are, and their case might have been, if Providence had thought fit.(私はいろいろ考えた末に、神の摂理が私に施してくれた善意に気づき、さらには確かに困難、不運はあったものの、現在の境遇に深く感謝の念を覚えるようになっていった。この点に関して、不幸な境遇にある人々が「自分のように苦しんでいる人が他にあるだろうか」と嘆いているとしたら、私は次のように忠告したい。もし神があなた方がそれにふさわしいと考えたとしたなら、あなた方は今よりさらに厳しい境遇に置かれていたことであろうということを肝に銘じておくべきだと)
 (写真は、ロンドンで購入した “Robinson Crusoe”。価格は5.99ポンド[約840円] )

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